7-本の紹介

【書評】『手帳進化論』(舘神龍彦)

『クラウド時代のハイブリッド手帳術』の発売も目前になってきていますので、本の中であげた参考文献のうち、まだ書評を書いていなかったものをフォローしていこうと思います。

一冊目はこの本。

手帳進化論―あなただけの「最強の一冊」の選び方・作り方 (PHPビジネス新書)
手帳進化論―あなただけの「最強の一冊」の選び方・作り方 (PHPビジネス新書) 舘神 龍彦

PHP研究所 2007-10
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概要

手帳に関して書かれた本は、あまた存在します。

Amazonで「手帳術」で検索すればヒットは402件。沢山の手帳術の本が出版されています。しかし、「手帳論」について書かれた本は、おそらくこの一冊だけでしょう。

私は何についても「そもそも論」からアプローチするのが大好きなので、本書は非常に楽しく読めました。構成は以下の通り。

第1章 手帳とは何か?
第2章 今、手帳はどうなっているのか?
第3章 手帳のシステムを知って、独自の”手帳術”を編み出す
第4章 手帳にアイテムを組み合わせて使う
第5章 手帳スイートを組み立てる

実用的な面で言えば、「手帳の選び方・使い方ガイド」という意味合いが強い本です。特定の手帳をお勧めすることもなく、どのように手帳を選べばよいのかが、丁寧に解説されています。

加えて「手帳の使い方」もある程度フォローされています。スマートフォンの大々的な普及で、ある程度古くなってしまった情報はあるものの、手帳初心者の方には参考になる情報もあることでしょう。

ちなみに、仕事ツールとしての手帳の選び方として、

  1. 利用の目的を見極めること
  2. 購入したらその手帳に慣れること
  3. 慣れでカバーできない部分は適宜調整していくこと

と3つのポイントが挙げられています。まだ、今年の手帳を選び切れていない人は、参考にしてみるとよいかもしれません。

手帳進化論

そういう実用的な面は、ちょっと横に置いておくとして、個人的に非常に面白く読めたのが第1章と第2章で行われている「手帳」の分析と考察です。

第1章では「手帳」の歴史が、第2章では「手帳」の現在が考察されています。この辺りの内容は、一つの手帳に固執せず、大局的に眺めてきた手帳評論家ならではといった感じです。単なる手帳マニアだとなかなかこうはいかないでしょう。

例えば、「共同体感覚からの自由な手帳」という表現。私は長年ほぼ日手帳を使っていますが、この言葉には深く頷かされました。

この言葉はシステム手帳の登場がもたらしたものを指してします。

さてでは、システム手帳がもたらしたものは何だったのだろうか。
それは、手帳概念の解体だ。

勤務先から支給されていた画一的な(そして社訓が書かれている)手帳ではなくて、自分の好みでカスタマイズできる手帳の出現。それは「手帳」とは一体何なのか、というイメージを解体してしまったと書かれています。

それまでの手帳というのは共同体感覚と強く結びついていたが、システム手帳の登場でそれが崩れてしまった、ということです。

変化の後の反動

当然、そういった大きな変化の後には反動が起こります。自然が真空を嫌うように、失われてしまった共同体感覚は、他の何かで埋められることになります。その代替品が「有名人手帳」というわけです。確かに、そういう側面がありそうです。私自身の体感としても理解できます。

有名人手帳は、__理念を示してくれるので__共同体感覚の代用になり得ますが、手帳の役割はそれだけではありません。

ある種の手帳はコミュニティーを生み出します。つまり共同体そのものを生み出すわけです。極度に平たく書けば、「同じツールを使っている」という仲間意識を生み出すということです。

なぜ手帳がそういったものを生み出すのか。それはある種の手帳が価値観を表明しているからです。

汎用性のある手帳ではなく、ある種の「こわだり」を持った手帳は、その「こだわり」から価値観が染み出てきます。それに共感できない人は、その手帳を使えないでしょう。逆に言えば、同じ手帳を使っているということは、自分と似た価値観を持っているという証左になります。これがコミュニティーの土壌になり得るわけです。

人はコミュニティーを必要します。会社というコミュニティーが機能しなくなっているなかで、その代わりになるものに価値が置かれるのは珍しいことではないでしょう。

おそらく、これからの手帳は徹底的に汎用的なものか、ある種の価値観を提示し、コミュニティーを築いていける力を持っているものの二極化が進むのではないでしょうか。

さいごに

システム手帳がもたらした変化は大きいものだったのでしょう。現代では、それ以上のインパクトがスマートフォンの普及によって起きています。「手帳なんていらなくないですか?」という話を聞くことも珍しくありません。

手帳業界は、この現代において「なぜ、紙の手帳を出すのか」ということを真摯に問う必要がありそうです。

本書は、細かい手帳術についてたくさん知りたい方にはお勧めできません。ただ、「そもそも手帳って何だろうか」を考えたい人には非常に示唆を得られる一冊です。

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