Evernoteという言葉を聞くと、おそらく3つぐらいのパターンが出てくるだろう。
- 無反応・あるいは嫌悪感(ケッ)
- 前のめりな好奇心(kwsk!)
- 興味あるし、試したけど(モジモジ…)
本書は3番目の人に向けられた内容になっている。
いまの5倍楽しくなるEVERNOTEラクラク情報記録術 |
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新井 ユウコ
秀和システム 2011-09 |
※出版社さまより献本いただきました。ありがとうございます。
著者はブログ「旅するBusidea」の中の人。彼女らしい独特の文体で、Evernoteへの再入門の道が提示されている。
がい☆よう
Evernoteの再入門ということで、細かいレベルの基本的な説明は省略されている。すでにアカウントも取ったし、いくつか本も読んでみたけれども・・・というのが対象ユーザーであるから、特に問題は無いだろう。章立ては以下の通り。
Chapter1 Evernote初心者を悩ませる「6つの思いこみ」
Chapter2 Evernoteが楽しくなる「6つの法則」
Chapter3 「6つの法則」を踏まえた活用術
Chapter4 もっとEvernoteを活用したくなったら
Chapter5 もっと上手にEvernoteの記録を使えるようになったら
Chapter1では、
「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す」
と言わんばかりに、Evernoteに対して抱かれがちな思い込みを解きほぐしていく。
6つのうちの最初に上げられているのが「Evernoteに入れるほどのスゴイことなんてめったに起きない?」だ。著者が指摘するとおり、これは思い込み以外の何ものでもない。
Evernoteに入れておいて、後から振り返ればそれが「スゴイこと」だったと気がつけるだけだ。日常を時の流れるままに過ごしているだけでは、なかなかその事実が発見できない。
そもそも私たちがこうして今まで「生き続けている」ということすら、ある種「スゴイこと」なのだ。だから、日常を記録していけばよい。それだけでライフログは十分に価値ある物になる。
Chapter3までは、じゃあどうやって記録をしていけばよいのか、に対するアドバイスと具体的な方法の紹介になっている。この辺りは先日紹介した『たった一度の人生を記録しなさい』とも通じる部分は多い。
※Chapter3では本ブログが紹介されております。ありがとうございます。
Chapter4ではある程度Evernoteに情報を蓄積した後のステップが紹介されている。中級編といったところか。ノートブックやタグについての話はここら辺で出てくる。個人的に、ノートブックとタグをどのように捉えているのか、というのは興味深いテーマで、私との差異が面白く読めた。
Chapter5はライフログ(Evernote)の将来像について。Chapter4と5の表題は雰囲気が似ている。しかし内容はまったく別だ。Chap.4の「もっとEvernoteを活用したくなったら」は「もっと活用したくなったら、こういうのもありますよ」というステップアップの提示だ。
Chapter5の「もっと上手にEvernoteの記録を使えるようになったら」は、「こういう未来もあるんじゃないかな」という一つの提言的な内容になっている。
※この辺はゴードン・ベルの『ライフログのすすめ』に詳しい。
一つ一つの内容は分かりやすく、具体例も多い。また文体も「わかる人にはわかる」タイプのネタが仕込んである。こうした表現は身近に感じられ、取っつきやすさがある。ただ、章立てがもう少しスッキリできたのではないか、という気がしないでもない。
とある二つの印象
本書で印象を受けた部分を二つ紹介しておこう。
積み上げてモチベーションもアップ
一つは「本のタワー」だ。読書のモチベーションが上がらないときは、積ん読してある本にフォーカスを当てるのではなく、今まで読んできた本を積み上げて「自分はこれだけの本を読んできたんだ」という肯定感を生み出すという方法論。
幸い私は読書のモチベーションが上がらないということがないので、これを試す必要はないが(試したら部屋がひどいことになる)、方法としてはなかなか面白い。努力の量を視覚に訴えかける、というのは古今東西有効な方法論だろう。人は見えないものを意識することがなかなかできないのだ。これは読書以外にも十分応用できる。
種類ごとノートブック
二つ目がノートブックの作り方。著者は「ノートを種類ごとにノートブックに分類する」という方法をとられている。本書から参考例を引けば、
- テキスト
- 画像
- 音声
- メールマガジン
- クリップしたWebページ
- PDFファイル
というような分類らしい。個人的には「この発想はなかった」、である。Evernoteに少しでも通じている人ならば「こんなの属性の検索で見つけられるじゃんか」とおっしゃるだろう。それに対して著者は
しかし、実際には検索のために専用の文法を覚える必要もあり、少々手間だと感じました。
と書いている。手間だと思うことはしない。実にすがすがしい割り切りだ。
想起の仕方がノートブックの土台
何かを思い出すときに、
「以前クリップしたレシピをどこにしまったかな?」
と想起する。
この「レシピ」の部分ではなくて、「クリップ」の方を重視してノートブックの分類を作るというのが著者の方法論だ。そしてこれもまた一つの立派な方法論だ。それでノートが探せるのならば、誰かから文句を言われる筋合いは一切ない。
※ちなみに私はまったく違う。
ポイントは何かを探すときに、何を想起し、何がキーになるか、という点だ。それに注目するとノートブックが作りやすくなる。
著書が提案する種類による分類は、これから始める人には汎用性のある方法だろう。「自分にとってその情報は何の意味を持つのか」を自問する必要が無いので、気軽に始めらはずだ。
さいごに
Evernoteについては様々な本が出ている。本書もその中の一冊だが、「Evernote再入門」という不思議な位置づけになっている。WebでEvernoteについて情報を入手している人は、それほど目新しいことが書いてあるわけではない。このブログを読んでいる人ならばなおさらだろう。
ただ、誰しもが同じ情報ソースを持っているわけではない。あるいは情報が多すぎて結局何から手を付けていいのやら、という人もいるだろう。本書はそういった人に優しく(あるいは楽しげに)手をさしのべてくれる本である。
本書を読んで、自分もEvernote「初心者」向きのコンテンツを書いてみたくなった。ある程度使えば自然と慣れてくる気はするが、そこに至るまでに挫折してしまう人もいるのだろう。どうすればEvernoteに「馴染めるのか」についてもっと掘り下げてみたい。あと、Evernoteのマニアックな使い方を集めてみるのも面白い。
▼こんな一冊も:
たった一度の人生を記録しなさい~自分を整理・再発見するライフログ入門 |
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五藤隆介
ダイヤモンド社 2011-09-30 |
ライフログのすすめ―人生の「すべて」をデジタルに記録する! (ハヤカワ新書juice) |
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ゴードン ベル ジム ゲメル Gordon Bell
早川書房 2010-01 |
とある魔術の禁書目録(インデックス) (電撃文庫) |
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鎌池 和馬 灰村 キヨタカ
メディアワークス 2004-04 |
EVERNOTE「超」知的生産術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-02-26 |
EVERNOTE「超」仕事術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2010-08-18 |
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