イノベーターのウィルス

「テクノロジーはみな、人間の意志の表現である」

という表現があるニコラス・G・カーの『ネット・バカ』ではテクノロジーを4つに分類している。

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること ニコラス・G・カー 篠儀直子

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4つのテクノロジー

一つめは「力や器用さ、回復力を拡張するもの」。鋤、かがり針、戦闘機などが例としてあげられている。

二つめは「感受性や感性の感覚を拡げるもの」。顕微鏡やアンプなどがそれにあたる。

三つめは「われわれの必要性や欲求に合うように自然を仕立て直すもの」。貯水槽や遺伝子組み換えトウモロコシなどである。

最後の一つが「知的テクノロジー」:知的能力の拡張や支援に用いられる道具すべて。

情報を見つけたり分類したり、考えを定式化したり文節化したり、ノウハウや知識を共有したり、計測したり、計算したり、記憶力を増強したりするのに用いられる道具のことだ。

『ネット・バカ』では地図、それに時計というテクノロジーが私たちの思考にどのような影響を与えたのかが考察されている。なかなか面白いので興味がある方は直接参照されると良いだろう。

知的テクノロジーがもたらすもの

カーは「知的テクノロジー」について次のように主張する。

われわれが何を考え、どのように思考するかに対して、最も長期的かつ最大の力を及ぼすのは知的テクノロジーだ。それはわれわれにとって最も私的な道具である。自己表現のために、個人的および公的アイデンティティの形成のために、他者との関係性の育成のために用いられる道具なのだから。

今までに存在しなかったこうした「知的テクノロジー」をこの世にもたらす存在に、何か名前を与えるとすれば、それは「イノベーター」だろう。

われわれが書いたり、読んだり、その他さまざまなかたちで情報を操るときに用いる道具は、われわれの精神に使われるものであると同時に、われわれの精神に働きかけるものでもある

作用があり、反作用がある。これは脳のフィードバック構造からも妥当な考え方と言えるだろう。

何度も何度もバットを振っている内に「無意識」にスイングができるようになるのと同じで、ある種の道具を使い続けることは脳にも何かしらの変化を与える。

今までとは違った形で情報を扱うツールは、私たちの思考法や考え方(遠慮がちに知性と言い換えても良い)に影響を与える。
※話を少し脱線させると、Evernoteやライフログのツールが持つ影響力はこの観点からも論じられるべきだろう。

もう一つのとっておき

カーはさらに続ける。

知的テクノロジーは広く使用されるようになると、しばしば新たな思考法を普及させたり、以前は小規模のエリート集団にのみ限られていた既存の思考法を一般にまで広めたりする。

誰かのアイデアで生まれた知的テクノロジーは、それが大きな規模で普及すると、その誰かのアイデアを種のように他の人に植え付けてしまう。映画『インセプション』で言うところの「アイデアはウィルスのように感染する」だ。

「感染」という言葉を使っているが、別に悪いイメージがあるわけではない。単にそう表現するしかないから、そういう言葉を使っているだけだ。

ある優れたビジョナリー&イノベーターのウィルスはもう感染して回ったのだろうか。アイデアの種は植え付けられ、これから芽生えようとしているのだろうか。

大きな喪失感の中に見える希望があるとすれば、そういう期待、ということになるのかもしれない。
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