前回の「ファストパス」の解説に「コンテキスト」という言葉を使った。
これはGTDで使われている「コンテキスト」よりももう一段解釈を広くしたものだったのだが、その辺りが説明不足だったのでもう少し書いてみることにする。
タスクが持つ文脈
タスクは単に作業として存在しているわけではない。それは何かしらの文脈に置かれている。
コンテキスト[context]:前後関係、文脈、背景、状況
GTDにおけるコンテキストは「状況」という意味だ。しかし「文脈」という意味で捉えると、もっと幅広い概念になる。簡単に言えばタスクの「メタ情報」全てが、そのタスクの文脈だ。
- いつ発生したか
- 誰から発生したか
- 何を達成するために必要なことか
- いつまでにやるべきことか
- どこでやるべきことか
- どの程度重要なことか
- いつやるか
タスクはぽんとただそこに存在しているわけではない。さまざなバックグラウンドが存在している。見れば明らかなものもあれば、ちょっと頭を捻らないと見いだせないものもある。また事後的に自分で付加することもできる。
一般的に使われる「状況」「優先順位」「締め切り」「実行日時」といったもの全てがそのタスクに付帯する「文脈」だ。そういう意味合いで、タスクの「コンテキスト」という言葉を使った。メタ情報としての「コンテキスト」。
そして、さまざまなタスク管理法の概念は、この「メタ情報」をどのように扱うかによって形が決まってくる。数は多いのか少ないのか。何を重視するか何を切り捨てるのか、そういった判断だ。
たとえば「一冊のノートにやるべきことを全て保存し、目に着いたものから取りかかる」といった手法は、このメタ情報の管理を一番低いレベルに落とし込んでいる。優先順位も締め切りもない。発生日時(というか頭に思う浮かんだ順番)だけが管理されていて、あとはまったく放置だ。この手法で回る人ももちろん存在するだろう。良いも悪いも特にはない。
こうした観点から、二つのタスクマネジメント手法について考えてみる。
GTD
GTDをタスクマネジメント手法と呼ぶのはいささか語弊があるかもしれないが、華麗にスルーしておく。
珍しく図を書いてみたので、そちらを参照されたい。
実行レベルまで来たときの、「行動」の管理は大きく二つに分かれている。
一つは「日時・時間」が決まっているもの。もう一つはそれが決まっておらず時間が出来たときにやる行動。
「日時」が決まっているものは「カレンダー」を使って管理し、時間が出来たときにやる行動は「状況」に合わせたリストを作る(正確には状況ごとに参照できるようにしておく)。
後者が「コンテキストリスト」と呼ばれているものだが、先ほどの拡大解釈したコンテキストの概念を用いると、この両者は別に大きくは違っていないことが分かる。
ようは、「日時」が決まっているものは、「日時」のメタ情報が付加されているタスクだ。そしてそれを管理するカレンダーは日時を管理するリストである。いわばカレンダーも形を変えたコンテキストリストなのだ。
だから必ずしも日付情報付きのタスクを「カレンダー」で管理する必要は無い。カレンダーがよく使われるのは、たんに私たちが日付を確認するときにそれを使い慣れているだけにすぎない。
GTDとファストパス
話が逸れたので戻ってみよう。
GTDは大まかに「時間によるリスト」(カレンダー)と「状況によるリスト」を使って行動を管理している。その二つで最適な行動戦略を自分で選べるような環境を作っているわけだ。が、しかしその行動戦略が本当に最適なものになるかはわからない。
コンテキストリストを確認すれば「今この状況で何ができるのか」はわかる。
そうすれば、無為に時間を過ごす可能性は低くなる。しかし、何をするかが分かったからいって、その行動に実際に取りかかるかどうかは不明である。GTDにはタスクに優先順位は付けないので、強制力は働かない。
「やれる状況で」「やりたくなった時」に過不足なくやれる環境を作る。そういう方向性だ。
タスクシュート
もう一つの手法がタスクシュートだ。ものすごく簡単に言ってしまえば、一日(18時間程度)をいくつかのセクションに分けて、そこでやる仕事をあらかじめ割り振っておく、というやり方だ。
※本当にざっくり過ぎる説明なので、「11/12(土) TaskChute(タスクシュート)の始め方から使いこなし方まですべて解説します」の記事でも参照に
ここでは「あらかじめ」というのがポイントになるだろう。要は一日の作業(及び作業時間)を「見積も」るわけだ。そういう意味では、広義では私の使っている「dailyタスクリスト」も通奏低音は同じである。
で、タスクシュートの「本日分」のシートも、極端なことを言ってしまえばコンテキストリストなのだ。そこに並んでいるタスクは、「その日やる」と文脈付けされたタスクが並んでいる。この文脈付けは外から発生した「締め切り」ではなく、自分の内側から発生したコミットメントだ。逆に言えば、タスクシュートの「その日分」を作成するというのは、タスクに「その日やる」というコンテキストを付与していく作業とも言える。
※リピート機能による登録もあるだろうが、その場合リピートさせるという決断がコンテキストの付与になる。
GTDでもそれは同じことである。あるタスクを見て、それに「@会社」というコンテキストを付けるのはその人自身の判断である。逆から見れば「@会社」というコンテキストを付けるというのは、そのタスクを会社で実施するというコミットメントとイコールなのだ。そこがイコールになっていないコンテキストは実質的に機能しない気がする。
ごく普通とは言い難いが
タスクシュートは一見極端な手法に見えるが(見えますよね?)、実際はそれほど突飛なものではない。あるタスクに「その日実行する」や「セクション○○」といったメタ情報(コンテキスト)を他の管理手法よりも多く(そして自らの手で)付加しているだけなのだ。
※そのやり方に首をかしげる人がいることは十分承知している。
もちろん、「その日実行する」というメタ情報は安易に追加されないといったクローズドリストのメリットもあるし、計算表ソフトを使うことで終了時間が「見える」という安心感(あるいはコントロール感)をプラスする機能もある。
が、その点をとりあえず置いておけば、タスクにコンテキストを与えているという部分はGTDと共通していると言えるだろう。ただ、その実装の形が違うだけだ。
さいごに
今回はGTDとタスクシュートという二つのタスクマネジメント手法について紹介してみた。そう、まだ終わりではない。
とりあえず確認したかったのは、タスク管理というのは実は「コンテキスト」が重要な意味を持っているという点だ。そして、GTDの「カレンダー」も「タスクシュート(その日分シート)」も(広い意味では)コンテキストリストだ、という点も見てきた。
アミューズメント施設内でファストパスを発行するというのは、それに乗る時間を「予約」することだ。そうすると何が起きるか。自分が園内にいる時間軸(5時間だか8時間だか)の中に、そのアトラクションに乗るという行為が配置される。言い換えれば「何時になったら〜に乗る」というコンテキスト付きのタスクが発生するのだ。それのありなしで、利用者が取り得る戦略のバリエーションは大きく変わってくる。
と、また話が広がりそうなので、今回はここまで。次回ぐらいで終わるとよいのだが、あまりその雰囲気はしてこない。
▼こんな一冊も:
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 |
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デビッド・アレン 田口 元
二見書房 2008-12-24 |
クラウド時代のハイブリッド手帳術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-09-23 |
マニャーナの法則 明日できることを今日やるな |
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マーク・フォースター 青木 高夫
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-04-05 |
成果を5倍にする ライブハックス! (ゴマ文庫) |
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大橋悦夫
ゴマブックス 2009-03-02 |