「これからは、後悔しないように生きよう」
20代の前半ぐらいに、ふと思い付きました。ふと、と書きましたが何か「きっかけ」となるようなことがあったはずです。人は何かに影響されて、行動を起こすものです。
そういったものが一切無ければ、昨日と同じことを繰り返しているだけでしょう。
その「きっかけ」が具体的に何であったのかははっきりと思い出せません。ビールを飲みながら観戦していたヤクルトの試合で放たれた見事なホームラン、でないことは確かです。
ただ、次の本に強く影響されていた可能性は高いと思います。なんといっても、何度も読み返している本の一冊ですから。
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ) |
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ロバート・B. パーカー 菊池 光
早川書房 1988-04 |
二つの戦略
おそらく、後悔しないための「戦略」は二つのアプローチに切り分けられます。
一つは、「起きてしまったことにいちいちネガティブに反応しない」。
もう一つは、「自分がやることは全力でやる」。
この二つです。
起きてしまったことは、もうどうであろうと起きてしまったことです。それを悔いたところで、今が変わるわけではありません。むしろ、起きてしまった現状をスタート地点にして、今から何ができるのかを考える方がいくぶんか建設的でしょう。
「自分がコントロールできる事柄がある場合は、それに基づいて必要な判断を下すのが、賢明な生き方だ」
これが基本的に「後悔しない」ということの意味です。しかし、これは対処療法的でもあります。もう少し原因に対するアプローチも必要でしょう。
生き方の姿勢
もう一つの「戦略」が、とりあえず自分がやることは全力でやる、というものです。仕事であれ、遊びであれ、どんな分野においてでもこの考え方は適用されます。
大体において後悔は、「納得感」不足によって生じます。
もし何かの試験に落ちてしまった場合、「もっと勉強していれば」と考えるのは、ようはもっと勉強できる余地があったと自覚していることの裏返しです。
自分の手持ちの時間をフルで勉強していたとしたら、「もっと勉強していれば」という考えはあまりよぎらないでしょう。逆に「これだけ勉強したのだから仕方ない」あるいは「次は勉強のやり方を変えよう」という方向になるかもしれません。
その時々で自分ができる最大限のことをやっていれば、もうそれ以上やることは不可能です。満タンのお風呂にお湯を足すことはできません。「もっとお湯を入れておけば」と考えても意味の無いことぐらいはすぐにわかるでしょう。
「そうだ、わからない。しかし、難しい言い方かもしれんが、それが人生というものなんだ。どういうことか起きるか誰にもわからない。人生をいちばん賢明に過ごすのは、その点を認めて、自分としてできる限りのことをしたら、あとはなにが起きようと対処できる状態にある人たちだ。ある男が言ったように、”すべては用意のいかんにかかっている”」
派生的な戦略
「自分がやることは全力でやる」戦略をとっていると、「自分が全力でやれないことはやらない」、という別の戦略も生まれてきます。
「自分が全力でやれない」と分かっていることをやってしまうのは、後悔を生み出す種になるからです。その種が成長していけば、グリーフシードのように黒く濁ってしまうことも考えられます。
この「自分が全力でやれない」というのは、求められる成果を出せる力が自分にある、というのとはちょっと違っています。そうではなくて、その時自分が持っているものを全てつぎ込める環境があるか、ないか、ということです。
※仕事を変えたのもこれが理由です。
だから、私は自分が興味持てないものは一切スルーしていますし、少ししか興味がないこともスルーしています。
逆に、ある程度閾値を超えたものは、とことん取り組みます。でも、それは一生の仕事としてやる、というのではなく、単にそれに関係しているときは、仕事であれ、趣味であれ、自分のリソースをがっつり突っ込む、ということにすぎません。
だから時の経過と共に、興味の対象が移り替わるということはあります。よくあります。
さいごに
こうして書いてみると、「自分がやることは全力でやる」と「自分が全力でやれないことはやらない」の二つは、かなり自分勝手な考え方のように思えてきました。すくなくとも協調性という要素は含まれていなさそうです。関係者とか連れ合いとかに迷惑をかけている可能性は大いにあり得ます。
そうやって、自分気まま度100%に生きていると、案外後悔することは少なくなってきます。どれだけ悲惨な事態になっても、「まあ、自分のやりたいようにやってきたしな」と思えます。もしかしたら、これはかなり特殊な性格の持ち主にしか適用できない戦略かもしれませんが。
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web,書籍などで、いつも大変勉強させていただいております。
私は手術室/集中治療室という医療の中で最もシビアで様々な選択を迫られる部署に身をおくものです。
患者さんのためという所での違いがあるかもしれませんが、全力投球で診療に当たらなければならず、「後悔」という言葉は原則ご法度です。
ここに存在するスタッフのモチベーション維持、育て上げるための教育法など、お手本なく進むが如しの現状です。
シゴタノなどで共感し勉強させてもらうことも多いです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
>山本俊介さん
コメントありがとうございます。
ブログでの自著の紹介も拝見させていただきました。ありがとうございます。
たしかに、医療の現場では「後悔」はあってはならないものですね。悔いたところで、決して戻ってこないものを取り扱う現場では、後悔しないためにどうするか、というのは常なる問題なのかもしれません。そういうレベルの「後悔」が存在するというのには思い至りませんでした。目が開かれた思いです。
大した情報が提供できているわけではありませんが、少しでもお役に立てているならば幸いです。
今後もよろしくお願いいたします。