7-本の紹介

【書評】『メディア化する企業はなぜ強いのか?』(小林弘人)

本書は簡単に言うと、企業のマーケティング戦略について書かれた本だ。もちろん「新時代の」と頭に付くことは言うまでもない。

メディア化する企業はなぜ強いのか? ~フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書)
メディア化する企業はなぜ強いのか? ~フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書) 小林 弘人

技術評論社 2011-11-29
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※出版社さまより献本いただきました。ありがとうございます。

シンプルな戦略

戦略の骨格をまとめると非常にシンプルになる。

  1. 企業自らがかつての出版社や放送局のようにメディア化し
  2. 自社の伝えたいことをコンテンツ化して発信
  3. そしてそれをソーシャルメディアの波に載せてユーザーに届ける

これによってユーザーと企業との信頼関係を築くこと。つまりソーシャルメディアを活用したエンゲージメント・マーケティングとも言えるだろう。

しかし、単にマーケティング担当者や広報部門の人が本書を読んで、それで万事OKかというと、なかなかそうはいかない。

経営陣も参画する、あるいは最低でも経営陣を巻き込まないと話は進まないだろう。なぜならば、そもそも「自社の伝えたいこと」が存在しなければ、それをコンテンツ化することなど出来ないからだ。

そういう意味で、企業がメディア化するというのは、単に「マーケティング戦略」の範疇にはとどまらない。むしろ広義の「企業戦略」の中に位置づけられるだろう。

「はじめに」の中にはこう書かれている。

創造性が多少乏しくても、面白くさせるばかりが、顧客/ユーザーをひきつけるすべてではありません。なぜなら、あなたが正直な人で、ユーザーにも真摯であろうとするなら、あなたの提案に共感する人たちは少なくないはずです。

逆に言えば「正直でなく、ユーザーに真摯でない」企業の提案は、あまり(あるいはまったく)共感されない可能性がある、ということだ。

どれだけ新しいソーシャルメディアを使っていても、ユーザーに真摯でない企業は評価されない。むしろ悪い評価が強くなる可能性もある。つまり、適当な商売をして適当に儲けたい、などと考えている企業はメディア化するとマイナスの影響すら出てしまうことになる。

逆にユーザーに真摯に向き合う企業は、メディア化することで大きな力を得られる。特に消費者と直接接する企業であれば、商品開発や売り方において根本的な変化が起きることもあり得る。

梅棹忠夫氏は「情報産業論再説」という論文(『情報の文明学』収録)の中で次のように書いている。

宣伝広告がまず根幹にあって、それに応じて、それにあうようにものをつくってゆくという時代がくるのではないか。

そういう時代が訪れようとしているのかもしれない。

メディア化戦略

では、実際に「メディア化戦略」とは具体的に何をすることを指すのだろうか。どうすれば「良いメディア化」ができるのだろうか。

それについての解はない。Blogを作れば良い、Twitterアカウントを作れば良い、Facebookページを作れば良い、といったわかりやすい「答え」は存在していない。

基本中の基本は、

自らが発信したい情報を見極めて、媒体の特性を理解し、それに合わせて最適化する。さらにそれを継続する。

に尽きる。実際に「メディア」と呼ばれているもの__テレビ・ラジオ・新聞・雑誌__がやっていることだ。

まず「発信したい」と思えるような情報がなければスタートしない。強い想いが必要になってくる。

情熱は共感を生み出す一つの大きな鍵だ。メディア化についての考え方を紹介した第二章の「いかにメディア化させるのか? その考え方とテクニック」では次のように書かれている。

不思議なもので、雑誌などがまさにそうですが、作り手が醒めていると、コンテンツは無機質でつまらないものになります。テクニックが洗練されていなくても、そこに作り手の愛さえあれば、不思議と魅力的かつパワフルなものが創出できることがあります。

さらに媒体の特性を見極めることも重要だ。本書でも「リアリティ」の獲得の必要性が説いてある。

ツイッターにおいて、商品名と価格とリンクしかツイートしないアカウントなどフォローしないだろう。あるいはフォローしたとしてもまずそのツイートなど読まないだろう。

それは実際にツイッターを自分で使っていれば簡単にわかるはずのことだ。しかしこのリアリティが欠落したアカウントが結構ある。これはまったくユーザーとのエンゲージメントを構築できていない。TLは新聞広告ではない、という当たり前のことを理解する必要がある。

最後に継続だ。テレビや新聞がメディアとして認知されているのは、続いているからだ。気が向いたときにしか発行されない新聞など、ちょっと想像できない。続けるというのは大変なことではあるが、大変であるがゆえに価値を生む行為でもある。特にユーザーと信頼関係を結ぶ上で、継続というのは大きな意味を持ってくる。

この基本を踏まえて、あとは実際にやってみることだ。本書内ではさまざまな「メディア化」の事例が紹介されている。それは単にマネするものではなく、考え方・捉え方を知るための材料だ。

自社がコアとするコンテンツが違っていれば、当然展開の仕方も変わってくる。そしてモノマネしないからこそ、独自性のあるコンテンツを生み出すことができる。ソーシャルメディアでは横並びの展開はあまり意味を持っていない。いかに尖らせるか、それが大切である。

さいごに

冒頭に企業向けのマーケティング戦略の本であると書いたが、本書はこの企業を「個人」に置き換えて読むこともできる。

というか、私は一応「個人」で生計を立てているのでその視点で読んだ。その視点に置いて一番共感を覚えたのは次の部分だ。

わたしは、本書のメディア化戦略を支えるものは、企業メッセージと、そこを主軸に編むプレミアムなコンテンツだと考えてます。つまり、相手にとって有益なコンテンツを発信し続けることで、企業の成長と共にお客さんにも成長してもらうのです。

この視点は「企業」でも「フリーランス」でも「フリーエージェント・スタイル」でも重要だろう。フリーエージェント・スタイルについては次の【書評】で紹介することにしよう。

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次回のお楽しみ。

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今回紹介した内容を非常にシンプルにして、かつ個人向けに書いた本です。

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