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【書評】『リーダーの値打ち』(山本一郎)

Posted on 2011 年 12 月 15 日 by Rashita

「国家とその国民が抱える問題はフラクタルな関係性を持つ」

これは私が常々感じていることだ。

国家が抱える問題が国民に「浸透」していくのか、それとも国民が抱える問題が総体として国家に結実していくのか、どちらが理由なのかはわからない。おそらくは、両方の理由が絡み合って起きているのだろう。

理由はどうあれ、現代の日本という国が抱える問題、そして日本人が個人として抱える問題にある種の共通項が見出せることは確かである。そして、その中間に位置するさまざまな組織__大小の企業など__にも共通項が見て取れる。

だからその一つを取り上げて分析すると、その他のレイヤーにも適用可能な要素を抽出することができるだろう。

リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書)
リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書) 山本一郎

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概要

本書はベンチャー企業やコンテンツ業界を長年見つめてきた著者が、会社組織が機能不全になっていく過程を一つの土台にしながら、現代における企業のあり方や個人の生き方について考察・提言した本である。

章立ては以下の通り。

  • 第一章 なぜ、こんなに頑張っているのに楽にならないのか?
  • 第二章 日本には、なぜビジョンを語らないリーダーばかり生まれるのか?
  • 第三章 駄目な人がトップに祭り上げられるメカニズム
  • 第四章 繰り返される日本史という時間軸と日本社会のグローバル化という空間軸
  • 第五章 マネジメント能力のアジャストと成長セクターのジレンマ
  • 第六章 理想のトップは「育成」できるのか

企業についての話だけでなく、時に国家レベルの話まで言及されることもあり、また著者個人の視点に基づいたごく身近な話も出てくる。

どのレベルの話を読んでいてても、最終的には「自分自身にとってはどういう意味を持つのか」という視点が想起されてしまう。最終的には「自分の生き方」に話が結びつくのだ。「自分の頭で考えてもらうこと」という著者の意図が本書の下地にあるのかもしれない。

文体は少しだけ堅め、という印象。著者のブログに出てくる毒のある(あるいは苦笑せざるを得ない)文章はほとんど見受けられない。

全体的にバランスの良い本だ。理想主義に陥らず、かといって現実に流されるままも良しとしない。現実を直視し、環境を見据え、変化を捉え、自分自身の方向性を確認し、自分をそれに乗せていく。そういう形の現実主義という感触した。

二つの疑問

タイトルは「リーダーの値打ち」で、サブタイトルは「日本ではなぜバカだけが出世するのか?」となっている。このサブタイトルはいかにも釣りっぽい。柔らかく言い換えればキャッチャーなコピーと言えるだろう。しかし、ごく日常的な疑問でもある。

本書の「はじめに」にでは、これを含む二つの疑問が提示されている。

「どうして、こんなに馬鹿な人が組織のリーダーになっているのだろう?」
「私たちはこんなに頑張っているのに、なぜ成果に結びつかないんだろう?」

日本社会で、特に組織の中で仕事をしている人ならば、一度以上は頭に浮かんだことのある疑問ではないだろうか。

もちろん、本書は組織存在を(あるいは特定の誰かを)バカにして・揶揄して・陥れて、悦に浸るような程度の低い内容ではない。そして、「私を信じれば(あるいはこの方法を実践さえすれば)楽になれます」というお手軽なものを提示しているわけでもない。

著者は先の二つの疑問を次のように言い換えている。

「個人の努力では全体の改善が望めない組織、社会、環境にどう向き合うべきか?」
「個人個人が状況に適した努力を払っているか?」

とても前向きな問いかけだ。

最初のバージョンの疑問では、取るべき行動が見えてこない。というか前者は純粋な知的好奇心による疑問というよりも、「あんな馬鹿な人が」という部分にフォーカスが当てられている場合が多い。つまり愚痴だ。組織の原理を理解しないままで、「結局何をやっても無駄だ」という無力感をはぐくむことすらあり得る。

後者は「頑張りが足りない、もっと頑張ろう」という方向の答えが出てきがちである。ガンバリズムの極点のような答えである。

「個人の努力では全体の改善が望めない組織、社会、環境にどう向き合うべきか?」という問いに直すことで、自分が取るべき行動の輪郭線が見えてくる。大きな組織は大きな力学で動いている。その中で「個人の努力」はとても小さな意味しか持たない。しかしそれは個人が無力だ、ということを意味してはいない。

同じように「個人個人が状況に適した努力を払っているか?」という問いも、実際今自分が何をすべきなのかを考え始めるきっかけになる。

自分が欲している成果に結び付かない努力をいくら重ねたところで、成果が生まれることはない。どういう努力を「もっと頑張って」も空回りがよりひどくなるだけだ。時には何かをしない(あるいは捨てる)という選択が成果に結び付くこともある。

多くの日本人に欠落しているスキルと考え方

上のような考え方を持つにはどうしたら良いだろうか。

そのヒントがリーダーシップとマネジメントにある。これは組織運営において用いられる言葉だが、その本質は個人が生きていく場合にも適用できる。
※『プロフェッショナルの条件』『クラウド時代のハイブリッド手帳術』なども参考になるかと。

第一章では次のように書かれている。

 人生もプロジェクトも、自分自身をマネジメントするのか、関係者や予算などリソースをマネジメントするのかの違いだけです。動機を確認し、目的を策定し、方法を確立し、達成するための見積もりを取り決め、必要なリソースを集め、進行を着手・運用し、状況を確認し、進捗に応じて軌道修正する。意志を持って何かに取り組むということは、旅行の幹事であれ人生設計であれ商売であれ国家政策であれ、ひとつのタイムスケールにリソースを流し込んで、企図する目的を達成しようという一連の試みに他ならないのです。

こうしたスキルあるいは考え方を有しているかどうか。それが生き方あるいは生きているという感覚に大きな影響を与える。

自分という人間をリソースと捉え、それをどう運用していくのかを考えること。そういう相対的な自分のとらえ方、あるいはメタ認識を持って、「現実」に対峙することができれば、後悔をやや少なめに、納得をやや多めに生きていくことができるかもしれない。

ただし、それは「スキル」であり「考え方」である。一瞬で身につくものではない。教育によって、あるいは経験によって内側にため込んでいくものだ。

著者が危惧しているように、日本社会ではそういうスキルを身につけるような機会が大きく減少しているように思う。だからこそ、宮台真司氏がいうところの「人に任せて文句を言う」風土が生まれてくるのだろう。

私自身はコンビニという小さいながらも一つの組織をマネジメントしてきた経験があり、それを自分自身に適応することによって、何とか独立して仕事をすることができている。前職の経験がなければ、独立した直後はもっと苦労していたことだろう。そういう意味で私の実感としても「マネジメント」スキルの能力の重要性は理解できる。

さいごに

今回は「個人の生き方」に関する部分をピックアップして本書を紹介してみた。しかし、第五章で紹介されているコンテンツ業界の実情など、著者ならでは話題もおもしろく読める。

コンテンツ業界が抱える問題は、明らかに「モノ作り」で成功してきた日本企業が持つ遺産がもたらす負の影響だろう。現代では「モノ」を売る企業も情報産業的視点と仕組みを持つ必要がある。そのあたりは梅棹忠夫氏の『情報の文明学』が参考になるだろう。

著者は「日本」について、必要以上に悲観的にも捉えていないし、かといって「放っておいてもなんとかなるなる」的な楽観主義にも捕らわれていない。おそらくそれは、著者自身が自分自身をどう捉えているのかということとフラクタルな関係があるのだろう。

▼こんな一冊も:

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