新成人へのアンケートを見て、考えたこと

つい先日、「成人の日」だったわけですがこんな記事を見かけました。

新成人に聞く、将来どんな仕事に就きたいですか(Business Media 誠)

 将来、どのような職業に就きたいですか? 2012年1月に成人式を迎えた人(学生、アルバイトなど)に聞いたところ「公務員」(19.4%)と答えた人が最も多いことが、マクロミルの調査で分かった。公務員では「地方公務員」「教育」になりたいという人が目立った。「公務員」の次には「会社員(技術系)」(14.9%)、「会社員(サービス系)」(6.2%)が続いた。その一方で、28.7%の人がまだ決めかねているようだ。

ふ〜ん、という感じ。

一番大きいのが「わからない」という28.7%。二十歳という年齢は、標準的な進学状況でも「これから、シューカツへの心の準備」的な段階なはずで、「わからない」が3割近くてもそれほど不自然ではない気がします。

それを除けば「公務員」というのが一番大きい答え。これは、日本社会の復興に自分の力を注ぎ込む、という決意の表明なのか、それとも公務員だったら安定だろう、という安心感の希求なのか、どちらかはわかりません。

次の「就職に対して不安を感じているか」にYesと答えている人が結構多いことを考慮すると、後者の可能性が高いと言えるかもしれません。

まあ、これだけならば別段なんてこと無いアンケートです。興味深いのがそれに続く「これからの日本が取り組むべきこと」のアンケート。

 また、これからの日本が取り組むべきことを尋ねると「雇用対策」(70.2%)を挙げる人が最も多かった。以下「景気対策」(65.6%)、「年金制度の充実・改善」(63.0%)、「被災地復興」(54.8%)、「放射能問題への対策」(51.6%)という結果に。

確かにどれも重要な課題です。それは間違いありません。

しかしながら、「景気対策」「年金制度」「被災地復興」「放射能問題」など、どれもこれもお金がかかる政策です。で、このお金ってどこから出てくるんでしょうか。

一番わかりやすいのが、無駄なお金を削減すること、ですね。「国の無駄遣いを止めろ!」というのは国民に心地よく響きます。消費税を上げる前に、まずそれをお願いする方がうんうん、というのはよく聞きます。つまり「国会議員」や「公務員」が槍玉に挙がるわけです。

で、その「公務員」になりたいと答えている若者が(上のアンケートだと)2割ぐらいいるわけです。面白いですね。

公務員になりたい理由がもし「安定」を求めるものだとすれば、「公務員の削除」「給料の削減」なんて政策は絶対に賛成できないですよね。自分で自分の門戸を狭めるようなものです。若者の一部が安定感で公務員の職を求めるということは、ある種の対立の火種が眠っている、と考えられるかもしれません。

フリーター(仮)の立場で

話を別のレイヤーに移動してみましょう。

一人のフリーターさんがいるとします。で、彼は「正社員」になることを希望している。あるいは努力すれば自分もいつか「正社員」になれると信じている。

もしこのフリーターさんの前に、政策に対する投票権があったとしたら、どちらに入れるでしょうか。たとえば、それはこんな政策です。

「<正社員>の利益・権利を徹底的に厚くする。終身雇用万歳!」
「<正社員>の権益を徹底的に解体する。非正規雇用万歳!」

片方は<正社員>を強固に守る政策です。一度なってしまえば安心・安全を保証するもの。当然その反動として、門を著しく狭めてしまいます。わかりやすい表現を使えば門をくぐっているかどうかで格差が大きくなる、ということです。すくなくとも、経済が安定的に成長し続けない限り、このタイプの制度はどうしても門前後の格差を広げてしまいます。

もう片方は、<正社員>という言葉を無実化してしまう政策です。企業側は簡単にクビが切れる。その代わり新しい人の流動も増える。「正規」か「非正規」かではなく、単に労働時間や契約形式の差があるだけ、という形にしてしまう。

さて、先の彼はどちらの政策を支持するでしょうか。もし、自分がその立場だったらどうするでしょうか。

もちろん、正解なんてありません。別にどっちを選んでもかまいません。

ただ、「若者の就職率が低いこと」は、経済の成長という変数が大きく変わらない限りは、雇用体系の問題に終着します。

経済が勝手に成長していって、新しい産業が次々と生まれているような状況では若者の就職率は問題にあがることすらないでしょう。あるいは国にお金がジャブジャブあまっているならば、費用対効果の怪しい公共投資をバンバン行うことで、数字の改善はできるかもしれません。極端なことを言えば、働きたい人を国が雇ってしまえば問題は簡単に解決します(あるいはしたかのように見えます)。

でも現状それを望むのは難しいでしょう。座れるイスの数はそう大きくは動きません。

誰かを座らせようと思えば誰かが立たなければならない。

若い世代を入れたければ、ぱんぱんに詰まった上の世代を止めさせるのが手っ取り早い方法です。

しかし、それは時間の針を先に送れば、入った若い世代もまた時間が経てば「上の世代」になることを意味しています。

はたして、それを受け入れられるのかどうか。そこが問題になるでしょう。

もちろん、実際のところイスの数は思ったより沢山あります。目をこらせばあちこちに転がっています。そう望むならば自分が座るイスを自分で作ることも不可能ではありません。

しかし、自分の身近にあるイスの順番待ちをしている人にとっては世界は限定されたイス取りゲームのように見えてくるのではないかと思います。限られたイスの争奪戦。

そういう人にとって、「自分が椅子に座ったときの優先権」というのは結構重要なんじゃないかな、という気がします。だから、雇用の問題というのは、なかなか根深いぞ、という気配が漂います。ワークシェアリングというのも、あくまで「自分」以外の仕事について語っている人が多いような気がします。

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