4-僕らの生存戦略

二つの30’sリアル

以前も紹介したが毎日新聞の「リアル30’s」という企画が興味深い。

リアル30’s:働いてる?(9)理想の仕事 追い求め 「はまる何かがあるはず」(毎日新聞)

三十代の若者と仕事の関係が垣間見えてくる。ちょっと距離を置いて傍観するような態度もあり、真正面から取っ組み合っているようなものもある。

Facebookでも同じ連載が読めるようだ。

リアル30’s:働いてる?(9)理想の仕事 追い求め 「はまる何かがあるはず」(Facebookページ)

この企画の内容については、また別の機会に書いてみたい。今回はこの企画のツイッターアカウント(@real30s)に向けられた感想をみて考えたことを、まとまらないままに書いてみる。

二つの感想

30代の企画に対する感想は大きく分けると二種類に分けられる。一つは「共感できる!」というもの。もう一つは「何言ってるの?こんなの全然リアルじゃないし」というもの。両極端だ。

もちろん、どちらかが嘘をついているわけではないだろう。それぞれ共に真実なのだ。

「こんなのリアルじゃない」という意見は、ごく一部の特殊な人を取り上げて、あたかもこれが30代の現実であると語るのはいかがなものか、といったニュアンスがある。

おそらくそれは「まだ」力を持った意見なのだろう。多くの人が普通に企業に勤めて、正規雇用者として生活している。そういう人たちの周りには、同じような人が集まるだろうから、その人の視点で見れば「現実」はそういう形をしている。

しかし、そうではない形の「現実」もまた存在している。その人の視点には映らない「現実」もあるのだ。

この両極端の感想が出てくる時点で、大雑把にまとめる「若者論」が機能しないことは明らかだろう。置かれている環境によって感じている「現実」は異なる。言い換えれば、同じ世代でもリアルの位相がずれた人々が存在しているわけだ。もう一段階言い換えれば、同じ30代でも異なった「リアル」を見ていることになる。

当然、どのような社会に対して感じ方をしているのか、どんな展望を持っているのか、どういう生き方が理想的なのかもことなってくる。画一的に若者が幸福だとか、あるいは不幸だとか断じるのは、ティータイムの暇つぶし程度の意味しかない。

分離する現実と共感

『東のエデン』という作品がある。

その作品の中には「東のエデン」というシステムが登場する。詳細はばっさり割愛するが、携帯のカメラで撮影した画像をキーにして、ネット上から画像検索を行うエンジンだ。この画像にレイヤーを乗せられるのがポイントだ。そのレイヤーを使えば、画像に利用者が書き込みできるようになっている。

つまりある物(あるいは事象・人・店などカメラで撮影できるもの)に対する、意見・感想・詳細データ・関連情報エトセトラがその辺を歩いているユーザーによって追加されるわけだ。

「東のエデン」システムを使っている人は、そうでない人が見ていない現実を見ることになる。言い換えれば、現実に集合知がオーバーレイされたものを現実αとして知ることができる。このあたりは現在のソーシャルメディアに重なる部分は多い。が、この辺に突っ込むのは止めておこう。

とりあえず、境界線の「こちら」側と「むこう」側では、「現実」という言葉が意味するものが違う。

「みんなちがって、みんないい 」的発想でいけば、それぞれの層が違った現実を生きるのは別に悪いことではないように思う。しかし、そこには深刻な問題が潜んでいる気がする。それは「共感」が働きにくい、という問題だ。

私たちの共感が、どのようなメカニズムで生まれるのかという議論には立ち入らないが、コミュニティーや共同体の存在が鍵をにぎっていることは間違いないだろう。同じ人間でも、身近にいる人と世界の裏側にいるまったくの赤の他人に対する共感が同じとは言えないだろう。理念としては同じであるべきかもしれないが、やはり濃淡や強弱は出てきてしまう。

共感は、何か同じものを共有している、あるいは同じものに属している、という感覚から生まれてくるのだろう。

まったく反対の二種類の感想の存在は、片方の側からもう片方の側への共感が生まれにくいことを示しているような気がする。ようは「そういう奴らがどうなろうと、知ったことはない」という感覚だ。

以前にも少し書いたが、正社員(正規雇用)の側にいる人間はその権利を固執するように動くだろう。非常に合理的な判断だ。その結果、非正規雇用の側がどれほど苦労する結果になろうが、そんなことは彼の現実には関係のない話である。

さいごに

最近、「怒れ」とか「戦え」といったメッセージを見かける。もちろん「若者」向けのメッセージである。

でも、私はこう疑問に思うわけだ。

彼らは一体「誰と」戦えばよいのだろうか。

それを想像すると、ちょっとゾッとしてくる。

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