7-本の紹介

【書評】『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』(漆原直行)

なんか、こう身も蓋もないタイトルである。やや煽り気味、という気がしないでもない。が、本書に書いてあることはだいたい合っている。

ビジネス書を読んだだけでは、デキる人なんかにはなれない。

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書) 漆原 直行

マイナビ 2012-02-24
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最初タイトルを見たとき、自己啓発嫌いの人が書いた「ビジネス書批判」の本なのかと思った。えてしてそういう本は読んでいて疲れる。

恨み辛みは文章を重くするし、「批判している俺かっけー」みたいなのは鼻につく。本書は、多少「好き・嫌い」は感じられるが、著者が意図的に見せている部分もあり、全体の印象はそれほど重たくはない。

それに、ぱっと見の印象だけで批判するのではなく、「ビジネス書」をきちんと読み込んで書かれている印象を受けた。結論に賛成できるかどうかは別として、こういう最低限の基準をキープしている本ならば、「ちょっと読もうか」という気になってくる。

ざっくり概要

本書が述べていることをざっくりまとめるとこうなる。

  • 「ビジネス書」って最近変質してきたよね
  • 「薄利多売」のスタイルは、全体的な質の低下を呼ぶんじゃないですか
  • もちろん、良書と呼べる「ビジネス書」もありますよ
  • で、あなたはビジネス書を読むためにビジネス書を読んでいませんか?
  • ちなみに、こういう「ビジネス書」との付き合い方はいかがですか?

章立てに置き換えると、以下の通り。

第1章 ゼロ年代のビジネス書幻想
第2章 ビジネス書の掟と罠
第3章 「ビジネス書」というビジネス
第4章 ビジネス書に振り回される人々
第5章 ”そこそこ”賢いビジネス書とのつき合い方
第6章 ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない

本書内でも指摘されていることだが、あまりにも数が増えすぎて、もはや「ビジネス書」という括りの意味合いがずいぶんと薄れてきてしまっている。私の『クラウド時代のハイブリッド手帳術』とドラッカーの『プロフェッショナルの条件』が同じ「ビジネス書」のカテゴリーに分類されるのはかなり違和感がある。

こういう状況には、新しい言葉(カテゴリー)を作れば良いのではないだろうか。私はそう思い、びっちり内容が詰まったものではなく、読者のちょっとした手助けになるような__本書の表現を借りれば「栄養ドリンク」的な__ビジネス書を「Biz本」と呼ぼうではないか、と考えた。もちろん、これが流行することはないだろうが。

3つのレイヤーに切り分ける

さて、「ビジネス書」を巡る問題は3つのレイヤーに切り分けて考える必要があるだろう。

一つ目は「出版社」というレイヤー。二つ目は「著者」。三つ目が「読者」だ。

出版社

「出版社」の問題は、出版点数をアップさせることによる本の質の低下だ。

私自身は「ビジネス書」も「Biz本」もどちらもそれぞれに価値があると考えている。ただ、「Biz本」には「これはちょっと・・・」と言いたくなるような本があることも確かだ。具体的に名前を挙げろと言われると、金庫のように固く口を閉じることになるが、皆さんも書店で「これはちょと・・・」と思ったビジネス書は一冊や二冊ではないだろう。

こういう本が増えてくると、大きな括りでの「ビジネス書」全般への不信感が募る。今は良いかもしれないが・・・というやつだ。まあ、出版業界も厳しいのだろうし、私自身「こうした方がいいよ」という提言もないので、ここは軽やかにスルーしておく。

著者

第2が「著者」についてだ。似たような本を乱発する著者の存在。といっても、だいたいこういうのはオファーが先に飛んでくるのだろうから、著者が全面的に悪いとは言えないだろう。「仕事、断れよ!」というツッコミが入るかもしれないが、仕事上に義理やしがらみはいつでも絡んでくるものだ。そういうのに巻き込まれると、知らぬ間に・・・ということになりかねない。

オファーそのものは出版社(あるいは編集者)から発生するわけだし、そのオファーの企画は「これだったら売れるだろう」という予測からくる。でもってその予測は「こういう著者の本なら売れる」という実績からくる。なんだかんだいって、人気の本を(あるいは人気の著者の本を)買うという消費動向が、そういう流れを生み出している、とも言える。これについては、責任者を見定めることは難しい。

一応、私自身も「ビジネス書」の書き手側なので、あんまり書いていると悲しくなってくるのでここに突っ込むのはやめにしておこう。本書にもあるが、本のタイトルも、著者とは別のラインで決まることが結構あるのだ。

読者

最後に「読者」について。

上にも書いたが、読者がどんな本を買いそうか、という傾向で通りやすい企画の傾向が生まれる。まさか全ての出版社や編集者がジョブズと同じ傾向を持っているわけでもないので、自然と実績のあるコンテンツと似たものが多くなってしまう。読者がどういうスタイルで買う本を選ぶのか、という傾向が変われば、出てくる企画の傾向も変わるかもしれない。

また、ビジネス書を読めば、それだけで「デキるビジネスパーソン」になれる__「救われる」__と考えている人は要注意である。そういうのはビジネス書中毒になりやすい。本書でもそういう「症状」が出ている人が紹介されている。こういうのは別に「ビジネス書」(あるいはBiz本)が悪いわけではない。そういう人は「ビジネス書」がなければ別のものに中毒していただけだろう。単に今の時代にそこにビジネス書があった、というだけの話だ。

本書の第五章はこういうビジネス書中毒になっている人への解毒剤的指南になっている。「”そこそこ”賢い」と控えめな表現になっているが、一つの読書術として参考になる点はあるだろう。

さいごに

私自身は自分の事を「ビジネス書作家」だとは思っていない。

たぶん、このBlogを愛読していただいている人も(ありがとうございます)同じ認識を持ってくれているだろう。私の場合は、たまたま「ビジネス書」の棚に置かれる本を書いた、というだけにすぎない。今後、機会があれば他にもいろいろ書いてみたいと考えている。

という話は置いておくとして、一介の読書好きとして、本屋さんの新刊コーナーが「これはちょっと・・・」というビジネス書で埋まってしまうのは悲しい限りだ。

他にも、面白い本は、いっぱいあるのだから。

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