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【書評】『人を助けるすんごい仕組み』(西條剛央)

Posted on 2012 年 3 月 14 日2012 年 3 月 14 日 by Rashita

「いっぱい赤線を、引きました」

本書の感想について、エセ糸井さん風のキャッチコピーを書くとこんな感じになるだろう。タイトルはラフな感じがあるが、内容はいたって真面目であり、そしてとにかく面白い。

人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか
人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか 西條 剛央

ダイヤモンド社 2012-02-17
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著者の西條さんについては、ほぼ日の連載「西條剛央さんの、すんごいアイディア」で知っていた。その時から「ははぁ〜、すごいな」と強く感心したことも覚えている。その連載記事はEvernoteにも保存し、時々読み返していた。

アイデアのちから

たとえば、重機免許取得プロジェクト。避難所で生活している方が、無料で重機免許を取得できるようにする、というプロジェクトだ。以下はほぼ日より。
※第5回 重機免許の取得プロジェクト。

避難所暮らしの人は、時間がありますから
いまのうちに
重機の免許を取ってもらう。

すると、町を作り直すときに
重機免許があれば、
自分たちの手で復興することができる。

「雇用創出を!」と叫ぶのはたやすい。でも、じゃあ具体的に何をどのようにするのか、という案はあまり出てこない。重機免許取得プロジェクトは、それに明確な答えを出している。

長くなるが、本書よりも引用しておこう。

「津波壊滅地域でこれからどう考えても需要があるのは、瓦礫の撤去と住宅の建設ですよね。街をマイナスからすべて構築していくわけです。これは地元、大手ゼネコンを巻き込んだ国家プロジェクトになります。その際に必ず役に立つのがブルドーザー、ショベルカー、フォークリフトなどの重機の免許ですよね。それがあれば雇ってもらえます。国も、地元や大手ゼネコンには、現地の人を優先的に雇用するように通達しているという話です。現実にはそこまでうまくいかなくとも、重機を取っておいたら有利に働くことは間違いないですよね。

至極明快な理屈だ。根性がひん曲がっている私でもツッコミどころは一つもない。むしろ西條さんの説明を読んでいると「一石なん鳥やねん!」と賞賛のツッコミを入れたくなってくる。

もちろん、この「重機免許取得プロジェクト」で全ての雇用創出がまかなわれるわけではない。しかし、小さいながら確かな一歩がそこにはある。そもそも、全ての雇用をまかなうようなプロジェクトを始めようとするから、機動力が悪くなる、という現実もあるだろう。必要なのは、確かな一歩なのだ。

こういうのが「アイデア」の面目躍如と言えるだろう。問題を解決する、いや問題を解決できる理屈。チップ・ハースとダン・ハースの共著に『アイデアのちから』という本があるが、まさにこの本の中で語られているのは「アイデアの(現実的な)ちから」と言ってよいだろう。

構造構成主義

このようなアイデア群を生み出してきた基盤にもなっている、「構造構成主義」についても本書では簡単に解説されている。ほぼ日の連載ではあまり掘り下げられていなかったので、興味深く読めた。
※時間がある方は、ウィキペディアでもご覧ください。「構造構成主義」

印象深いのは糸井さんに語る、西條さんの次のような言葉だ。

要するに、考えればいいポイントは2つしかない。それは『状況』と『目的』なんです。いまはどういう状況で、何を目的にしているか。今回の場合は、目的は『被災者支援』ですけれども、こおの2つを見定めることで、『方法』の有効性が決まってくるんです。

つまり、有効な方法が先に存在しているというわけではく、状況と目的に応じて方法を見つけるし、無ければそれを作る、ということになる。言い換えれば、現実の姿から方法を組み立てる、となるだろう。

Evernoteの整理にしても、プロジェクトの進め方にしても、組織の作り方にしても、麻雀の打ち方にしても、基本的にはこのやり方がベストだろう。それは画一化するには状況が異なりすぎている。そんな中で「方法」を先に持ってくると、現実的有用さが失われがちだ。ベットのサイズに合わせて足を切るような事になりかねない。

組織について

本書は、被災者支援に向けてどんなプロジェクトが動いてきたのかを紹介すると共に、どのようにプロジェクトが動いてきたのかも紹介されている。プロジェクトが迅速に立ち上がる経緯、協力の輪が瞬く間に広がっていく様子、有志の人たちをまとめる組織のかたちなど、現代のソーシャルメディアを介したプロジェクトの進め方として参考になる点は大いにあると思う。

以下は糸井さんと西條さんの会話よりの引用。

「全体の状況を把握している人というのがいないままに、いろんなプロジェクトが動いているわけだ」
「そういう組織じゃないと、これだけの有事に適切に対応するのは難しいですね。自律的に考えながら、まとまった動きができる組織じゃないと」と僕。

この部分を読むと、公安9課が彷彿とされる。

組織は何かしらの目的を持った存在だ。その組織の作り方も「構造構成主義」の考え方で捉えられる。有用な組織の在り方が先に存在しているわけではない。状況と目的にあわせて、方法つまり組織の在り方を作る。状況に最適化されているので、組織の優劣を競っても意味がない。プラスドライバーとマイナスドライバーのどっちが偉いのかを考えるようなものだ。

こういうシンプルな思考法には、前例主義のまとわりつくような重たさはいっさいない。

実際、最初に「家電プロジェクト」を実施しようとしたとき、「ふんばろう」の現地スタッフからも、「公平に家電を渡せなければ、問題が起こる可能性があるからやめてほしい」と強く言われたことがある。
僕は「僕らの目的は被災者支援です。問題を起こさないことが目的ではありません。被災者支援が目的である限り、やめるという選択肢はないです」と説得することでわかってもらうことができたのだが、(以下略)

「何が目的か」がブレていなければ、自ずと行動は明らかになってくる。前例主義は、問題を起こさないこと__責任が自分に回ってこないこと__の目的にぴったりの手法だが、被災者支援には何一つ向いていない。

いや、これは被災者支援に限った話ではない。「何が目的か」は、個人であれ、企業であれ、その他の組織であれしっかりと共有されている必要があるだろう。

さいごに

おもしろい部分をピックアップしていけばきりがないので、この辺で終わりにしておこう。

最後にちょっとチラ見せ。

「情報さえ与えてやれば、答えは導き出せる」
「5%理論」「絶望の公式からの抜け出し方」
「クジラより小魚の群れ」「よいところを見て、適材適所」
「ボランティア組織は「感謝」を忘れたときに崩壊するのだ」

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1 thought on “【書評】『人を助けるすんごい仕組み』(西條剛央)”

  1. ピンバック: 2012/03/15 いいなと思った記事 « 単純作業に心を込めて

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