R-style

Sharing is Power! / Create your own way.

Menu
  • ホーム
  • About
  • メルマガ
  • 著作リスト
  • Evernoteの使い方
  • Scrapboxの使い方
  • Tools
  • お問い合わせ
Menu

「情報の整理」についての再考(上) 〜物忘れと「押し出しファイリング」〜

Posted on 2012 年 3 月 21 日 by Rashita

「物忘れ」というのは、なかなか嫌なものです。でも、それはある種の便利さの副作用と言えるのかもしれません。

ダニエル・L・シャクターの『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』で、次のような記述が出てきます。

なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎 (日経ビジネス人文庫)
なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎 (日経ビジネス人文庫) ダニエル・L. シャクター Daniel L. Schacter

日本経済新聞社 2004-11
売り上げランキング : 96120

Amazonで詳しく見る by G-Tools

ある情報への需要は、それが最後に使われてから経過した時間と共に低下する。

たしかにそうですね。最近使った情報の方が、そうでない情報よりも再利用する確率は高いでしょう。アプリケーションの「最近使ったファイルを開く」がいかに便利かを考えればよくわかります。

したがって、時間の経過とともに情報へのアクセスをむずかしくするという記憶のシステムは、非常に機能的だといえる。

私たちは脳に対して「これと、これを忘れましょう!」と命令したりはしません。降り注ぐ雪のように記憶は自然に手の届かない場所へと消えていってしまいます。使用頻度が低い情報は思い出しにくくなり、やがてまったく思い出せなくなる、といった具合です。

つまり、私たちの記憶システムはこの規則正しさを利用して、ある情報を最近使っていなければ、おそらく将来も必要ないだろうと判断する。この判断は正しいことの方が多く、その場合には忘れたことは意識されない。ところが判断が誤っていた場合には、物忘れによるいらだちという形で意識されるのである。

たとえば仕事の同僚で「鈴木さん」という人がいたとしましょう。その人に会う度に、自分が知っている全ての鈴木という名字を持つ人の下の名前が思い出されたら相当にうっとうしいことは間違いありません。中学校の同級生でもう20年以上も会っていないような鈴木○○さんの名前は頭に上らなくてもよいのです。というか上って欲しくありません。そして私たちの脳は、実際それを実現してくれています。

しかし、20年ぶりに級友に再会したときに、はたと困る事態に遭遇するのです。「あぁ、なんで思い出せないんだろう」と。が、そのタイミングで鮮やかに思い出せてしまうような脳であれば、日常生活の鈴木さんとの遭遇でいちいち全ての鈴木さんの名前をマッチングする必要が出てきてしまいます。

私たちは日常的に「忘れられている」ことのメリットを意識しないので、「忘れてしまった」ことのデメリットばかりに注目しがちです。でも、きちんと忘れることは、部屋の整理で「不必要なもの」を定期的に捨てることぐらい大切なことです。

こう考えると、あらためて『「超」整理法』の「押し出しファイリング」というのはすげぇな、と思うわけです。

「押し出しファイリング」

一体「押し出しファイリング」というのがどの程度「一般的」な話になるのかわかりませんので、簡単に説明しておきましょう。
※詳しい話は『「超」整理法』を参照のこと

  1. 本棚に一定の区画を確保する
  2. 角形二号の封筒(A4の書類が入る封筒)を大量に用意する
  3. 机の上に散らばっている書類などを、ひとまとまりごとに封筒に入れる
  4. 封筒裏面の右肩に日付と内容を書く
  5. 封筒を縦にして、本棚の左端から順に並べていく

これで終了。あとは、新たに到着した資料や書類も同じように封筒に入れて、本棚の左端に入れるようにする。一度取り出して使ったものも、左端に戻す。つまり、最新の資料や作成したばかりの書類が左寄りに集まり、そうでないものはどんどんと右方向に「押し出されて」いくことになるわけです。

基本はたったこれだけ。プロジェクトごとに区画も作らなければ、封筒の中身によって選別もしない。分類による整理から、時間軸検索による整理への転換です。

このファイリングシステムは「ある情報への需要は、それが最後に使われてから経過した時間と共に低下する」の原則にピタリと一致しています。一度使ったものは、再び使われる可能性が高まるし、なかなか使われないものは今後も使われない可能性が高い。

情報の必要性とアクセスしやすさがみごとにフィットしています。しかも、その環境を維持するために必要な行動が「使ったら左端に戻す」というルール一点。手動のシステムとしては、最高にシンプルなルールです。このシステムを使っている本人は日常的に「整理」をしている感覚すらないでしょう。これがポイントの一つです。

いかに捨てるか

もう一つ押さえておきたいのが、廃棄基準の確立です。

物理的スペースには限界がある以上、資料の量が増えてくると必然的に何かを捨てる必要性が出てきます。棚を増やすというブルジョワジーな解法も存在しますが、それにも限界があるでしょう。

で、目の前に積まれた書類群を見て、「どれを捨てようか」と悩むことになります。まさか書類一枚一枚をチェックして「これはときめくかどうか」を判断することはできません。だいたいときめくかどうかなんて、その日のコンディションにも大きく左右されると思うので、書類の整理には向いていない方法でしょう。

「必要かどうか」を判断基準にすることもできそうですが、多くの書類は「なんとなく必要そう」な気がするものです。だから、なかなか捨てにくい。

しかし、「押し出しファイリング」では明確に「右の方の書類は必要ない」と判断できます。つまり、何か一つ封筒を捨てなければならないとすればそれは一番右だろう、ということが(まさに)目に見えて理解できます。特に悩む必要はありません。
※使用頻度が低くても、確実に将来的に使う可能性があるものは「神様ファイル」として扱われます。

この廃棄のための基準が確立されているのも「押し出しファイリング」のメリットです。

たいていのファイリングシステムは「いかに保存するか」を決めてはいても、「いかに捨てるか」を考慮していません。それはシステム開始の時点から、破綻が決定づけられているようなものです。システムを維持していくためには、何かしら捨てるための基準が必要です。

「押し出しファイリング」は、もう20年も会ってないから級友の鈴木くんの名前は思い出せなくても問題ないだろう、と脳が__判断したかどうかはわかりませんが__記憶を薄れさせていくのと同じシステムが出来上がっていることになります。

これほどシンプルな手順とルールだけで、機能的なシステムが構築されるのですから、すげぇと思うのは不自然なことではないでしょう。

さいごに

が、これはあくまで物理的スペースという限られた空間上に、物理的な書類を保管し、それを引き出して使うための方法論です。

野口氏も2008年発売の『超「超」整理法』でデジタルの整理法についてもすでに言及されています。時代は変化し、扱う「情報」の形は変わりつつあります。デジタル化あるいはクラウド化によって、新しい情報利用の形も生まれつつあります。

しかし、情報の整理について基本的に変わらない部分もあるでしょう。

次回は、「情報の整理」の差異と共通項について考えてみたいと思います。

▼こんな一冊も:

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)
「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書) 野口 悠紀雄

中央公論社 1993-11
売り上げランキング : 39187

Amazonで詳しく見る by G-Tools

超「超」整理法 クラウド時代を勝ち抜く仕事の新セオリー (講談社文庫)
超「超」整理法 クラウド時代を勝ち抜く仕事の新セオリー (講談社文庫) 野口 悠紀雄

講談社 2012-01-17
売り上げランキング : 192400

Amazonで詳しく見る by G-Tools

前の記事 次の記事

3 thoughts on “「情報の整理」についての再考(上) 〜物忘れと「押し出しファイリング」〜”

  1. ピンバック: 2012/03/21 いいなと思った記事 @tjsg_kokoro « 単純作業に心を込めて
  2. ピンバック: R-style » 「情報の整理」についての再考(中) 〜コンビニの棚作り〜
  3. ピンバック: R-style » 「情報の整理」についての再考(下)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

有料メルマガ配信中!

サークルもやってます

New Book!

すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術

「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 (星海社新書)

オススメ本

→これまでの著作一覧
  • →SNS:
  • rashita2 さんのプロフィールを Twitter で表示
  • rashita さんのプロフィールを GitHub で表示

Hot Books!

→紹介記事

→紹介記事

→紹介記事

最近の投稿

  • 『Re:vision』が「Kindle本夏のビッグセール」対象となりました。
  • ノートがやがてうまく使えなくなる問題
  • ノートで世界を知る、自分を知る
  • 一つの情報に、もう一度触れること
  • 執筆はメモからはじめる
  • ブログ死すとも文章は死せず

カテゴリー

  • 0-知的生産の技術 (1,580)
    • BlogArts (121)
    • Evernoteの使い方 (177)
    • Scrapboxの用法 (101)
    • Scrivenerへの散歩道 (22)
    • アウトライナーで遊ぼう (88)
    • プログラミング (11)
    • 執筆法 (45)
    • 断片からの創造 (93)
    • 物書き生活と道具箱 (682)
  • 1-情報ツール考察 (74)
  • 2-社会情報論 (108)
  • 3-叛逆の仕事術 (392)
    • 「タスク」の研究 (260)
  • 4-僕らの生存戦略 (259)
  • 5-創作文 (91)
  • 6-エッセイ (217)
  • 7-本の紹介 (465)
  • コレクション (4)
  • 未分類 (2,833)
    • まとめ記事 (516)
    • 企画 (83)
    • 告知 (262)
    • 感想群 (111)
    • 時事ニュース (1,241)

タグ

#365日の書斎 #AppleScriptでEvernoteを操作する #「目標」の研究 #わりと身も蓋もない話 applescript blog BlogArts CategoryAllegory Dynalist Evernote GTD iPhone・iPad・Mac Scrapbox Scrivener Workflowy 〈学びの土曜日〉 「本」の未来 『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』 うちあわせCast ささやかな質問 ほぼ日手帳 アウトライナー アナログ道具あそび ショートショート セミナー・オフ会・イベント セルフ・ブランディング タスク管理 ノート ノート術 ポッドキャスト 哲学 思想 思考の技術 情報カード 情報摂取の作法 手帳術 政治・社会 教育 文房具 文章の織り方 新しい時代を生きる力 書評 発想法の探求 経済・金融 電子書籍

アーカイブ

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org

My Works

著作リスト

著作リスト

アーカイブ

カテゴリー

アーカイブ

  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年3月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月
  • 2015年11月
  • 2015年10月
  • 2015年9月
  • 2015年8月
  • 2015年7月
  • 2015年6月
  • 2015年5月
  • 2015年4月
  • 2015年3月
  • 2015年2月
  • 2015年1月
  • 2014年12月
  • 2014年11月
  • 2014年10月
  • 2014年9月
  • 2014年8月
  • 2014年7月
  • 2014年6月
  • 2014年5月
  • 2014年4月
  • 2014年3月
  • 2014年2月
  • 2014年1月
  • 2013年12月
  • 2013年11月
  • 2013年10月
  • 2013年9月
  • 2013年8月
  • 2013年7月
  • 2013年6月
  • 2013年5月
  • 2013年4月
  • 2013年3月
  • 2013年2月
  • 2013年1月
  • 2012年12月
  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月
  • 2009年2月
  • 2009年1月
  • 2008年12月
  • 2008年11月
  • 2008年10月
  • 2008年9月
  • 2008年8月
  • 2008年7月
  • 2008年6月
  • 2008年5月
  • 2008年4月
  • 2008年3月
  • 2008年2月
  • 2008年1月
  • 2007年12月
  • 2007年11月
  • 2007年10月
  • 2007年9月
  • 2007年8月
  • 2007年7月
  • 2007年6月
  • 2007年5月
  • 2007年4月
  • 2007年3月
  • 2007年2月
  • 2007年1月
  • 2006年12月
  • 2006年11月
  • 2006年10月
  • 2006年9月
  • 2006年8月
  • 2006年7月
  • 2006年6月
  • 2006年5月
  • 2006年4月
  • 2006年3月
  • 2006年2月
  • 2006年1月
  • 2005年12月
  • 2005年11月
  • 2005年10月
  • 2005年9月
  • 2005年8月
  • 2005年7月
  • 2005年6月
  • 2005年5月
  • 2005年4月
  • 2005年3月
  • 2005年2月
  • 2005年1月
  • 2004年7月
  • 2004年6月
  • 2004年5月
  • 2004年4月
  • 2004年3月
©2022 R-style | WordPress Theme by Superbthemes.com