・「情報の整理」についての再考(上) 〜物忘れと「押し出しファイリング」〜
・「情報の整理」についての再考(中) 〜コンビニの棚作り〜
の続き。
前回は、全然関係ない話を書きました。商品=情報、お客さん=情報の利用者に置き換えると、いくつか見えてくることがあるかもしれません。
では、「情報の整理」に戻って、考えを進めていきましょう。
そもそも論
そもそも、なぜ「情報の整理」を行うのでしょうか。
「俺の本棚カッコイイ!」と叫ぶためではありません。「後で情報を見つけ出せるようにするため」あるいは「情報を見つけ出しやすいようにするため」というのが理由です。
机の上に見上げるような書類の山脈が築かれていても、その主が「あの資料は、この辺」とか「報告書はその山の一番上」などと、場所をきちんと把握しているのであれば、それは十分「整理されている」と言えるでしょう。ただ、整頓されているとは言えません。これが、整理と整頓の本質的な違いです。
整理は意味的・内容的な部分に関わるもので、整頓は表面的・外見的に部分に関わるものです。
おそらくその人の中では、右の方から古い順に山が積み重ねられていて、必要な書類の新しさから置いてある部分を推測するのでしょう。
※あくまで思考実験の話であり、現実的にこれができる人は非常に限られていると思います。
つまり、見た目はともかく、後で必要なものが見つけ出せれば整理の基準を満たしていることになります。だから、もしごちゃごちゃと放り込まれていても、キーワードの検索で必要な情報を見つけ出せるとすれば、それも情報が整理されていると表現することができます。
紙の上の情報ではこれができないので、多少物に寄り添った形で整理を行う必要があります。たとえば、あるプロジェクトの資料を一つの封筒にまとめておく、というもの物に寄り添った整理です。この辺を掘り下げていくとかなり深いところまでたどり着きそうなんで、今回はこの辺で辞めておきます。
とりあえず、「整理」とは「後で情報を見つけ出せるようにするため」の行為、ということを押さえておきます。
情報のパラメーター
もう一つ押さえておきたいのが、「情報は均質ではない」ということです。
重要な情報もあれば、そうでない情報もあります。緊急度が高い情報もあれば、いつでもOKさっ!(鶴屋さん風)という情報もあります。新しい情報もあれば、古い情報もあり、最近使った情報もあれば、ちかごろご無沙汰な情報もあります。
このどこに注目するかで整理システムの形が変わってきます。
注目したいのは、これらの要素が時間と共に変化する可能性を含んでいることです。今日重要な情報が明日重要とは限りません。緊急度の高い情報でも、案件を処理し終えたらパラメーターは一気に反転します。
そうすると、固定的な整理システムは時間が経つにつれ、いびつな形になっていくだろう、と予想することができます。要素を固定するのではなく、配置や順番を変えられるシステムでないと現実適応できなくなっていくでしょう。
これらの要素で唯一変化しないのは、情報の生成日時です。これを軸にしたシステムならば、一通りの配置で事足ります。現にそういうシステムは存在しています。
運用面の問題
あと、運用面に関してですが、「整理」に関する行為が日常のワークフローに組み込まれているのがベストです。「押し出しファイリング」では左に書類を戻すという作業。Evernoteであれば、インボックスの処理やレビューといった作業がそれです。
先ほど書いたように、情報のパラメータは時間と共に変化します。情報を使ったり、新しい情報が入ったりすれば、否応なしに変化を迫られます。その変化にはあまり長すぎない時間で対応する必要があるでしょう。でないと、その期間、「見つけたい情報がなかなか見つけ出せない」システムになってしまいます。
エントロピーの増大は避けられないのですから、それに対抗する方法を日常に組み込んでおくことが必要です。たとえば、「使ったものは、元の場所に戻す」という非常にありがちなアドバイスも、「整理システム」を維持しておくための方法です。
※はさみや物差しは、それほど急激にパラメーターが変化したりしないので、「元の場所方式」が一番見つけやすい。
さらに、この作業にあまり時間を取られすぎないようにしておくのも、現実的な面では必要でしょう。後で使うために整理をするのであって、整理しすぎて後で使う時間そのものがなくなってしまえば本末転倒です。
さいごに
以上書いてきたことをざっと眺めると、情報の整理については、以下の3つの要素を考慮する必要がありそうです。
それは、
- 情報の入り口部分
- 情報システムの中身と、その維持方法
- 情報の出口部分
の3つです。
「情報の入り口部分」はどんな情報が、どんな頻度で、どのぐらいの量入ってくるのか。あるいはどのような経緯で入ってくるのか。
「情報システムの中身と、その維持方法」は、規模や構造あるいは操作方法について。またメンテナンス作業について。
「情報の出口部分」は、どのように情報を利用するか。どのように情報を引き出すか。誰がその情報を使うか。
といったことです。
というわけで、切り口が見つかりました。が、とりあえず今回の連載はこれまでとしておきます。また、別の回でこれについて掘り下げることにしましょう。
▼こんな一冊も:
「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書) |
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野口 悠紀雄
中央公論社 1993-11 |
涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫) |
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谷川 流 いとう のいぢ
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-05-25 |
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