3-叛逆の仕事術

【試し書き】手帳論(3)

【試し書き】手帳論(2)の続き。

今回は「クラウド+スマートフォンがもたらした変化」について考えてみたい。

が、これはずいぶんと大層な話になりそうなので、流れを損なわない程度に要点だけ書くことにする。すると、二つのポイントに集約できそうだ。

一つは、「”仕事場”という感覚の変化」。
もう一つは、「裾野の広がり」。

“仕事場”という感覚の変化

パソコンだけでGoogleカレンダーを使っているときは、「へぇ〜、便利だな〜」としか感じなかった。こうしたツールが無料で使えるのは、改めて考えてもすごいことなのだが、「まあ、儲かっているGoogleさんのやることだし」ぐらいの認識で捉えていた。

その感覚が変化したのは、iPhoneを持ってからだ。

iPhoneを導入したばかりのころ、ちょっと「実験」をしてみたことがある。きっと誰しもがやることだろう。

iPhoneでGoogleカレンダーに予定を入れ、それをパソコンのウェブブラウザで確認する。ほぼリアルタイムでパソコン上に予定が追加されたのを見たときに、「おぉ!、これはすごい!」と素直に関心した。

その「すごい」には様々な意味が込められていて、ピンセットを持ってこないと容易には分解できそうにもない。ただ、「予定」がクラウドの向こう側に行く、という感覚だけははっきりと覚えている。その感覚は、頭がぐらりとするようなインパクトがあった。

用途の拡大

仕事で使っているツールの用途は、徐々に拡大していく。

予定だけではなく、必要な資料もGoogleドキュメントにアップするようになった。メーラーも当然Gmailだ。「予定」がクラウドの向こう側に行く感覚、の「」の中をその他の仕事の情報に置き換えていったわけだ。
※その頃はEvernoteは使っていなかった。

結果、「仕事をする場所」=「仕事場」という感覚が徐々に色あせてきた。

それまでも、カフェなどで作業をすることはあったが、それはあくまで「仕事場」というメインスペースがあり、「カフェ」という一時避難場所があった、というだけだ。クラウドに仕事の情報を置き始めると、「仕事場」という概念が解体され、日常のどんな場所でも「仕事をする場所」になり得る可能性を秘めてくる。

クラウドツールを多用している人は似たような感覚を持っているのではないだろうか。

おそらく仕事の大半を外回りで過ごしている人は、すでに似た感覚を持っているかもしれない。それがデスクワークにも及んできたわけだ。
※もちろん、今の日本企業でまったく同じ事が起きていると言いたいわけではない。

人が置かれている環境の変化

もう一つ、並行して考えたいのが、日本の企業と被雇用者の関係だ。

終身雇用・年功序列という幻想が崩壊してから、「愛社精神」みたいな言葉は死語どころか古語になろうとしている。というのはさすがに言い過ぎだが、一つの会社に骨を埋めたいという人の割合は小さくなってきているだろう。
※会社を辞めたくないという人は、愛社精神ではなく、不安定な状況に身を置きたくないだけだろう。

転職するのは別に変なことではなく、自分の能力を発揮できる職場で働き、仕事に充実感を求める人は増えてきているように思える。

「自分の能力を発揮できる場所」というイメージをどんどん広げていくと、別に会社というものに自分を結びつける必要性は薄まってくる。仕事に自分を結びつければよいだけだ。

これを拡張していくと「ノマド」ということになる。あるいは、仕事以外の分野で自分の能力を発揮できる場所を持つ、というのでも良い。こうしたBlog活動も一応それに含められるだろうし、NPOやらボランティア活動もその対象に入ってくる。

「仕事場」という感覚が薄れてくることと、「会社以外の場所に「仕事」を求める」という感覚は非常に相性が良い。

・クラウドに仕事の情報を置いておく→仕事はオフィスで行うという感覚の薄れ→自分がいる場所=仕事する場所

・会社の強固な庇護の弱体化→会社存在と自分のアイデンティティをピタリ重ねることが無くなる→自分の居場所≠会社

つまり、二つの意味で<自分が「仕事」をする場所は、会社に限られるものではない>という感覚が生まれてきている、ということだ。

この感覚にリアルさを感じられる人もいれば、そうでない人もいるだろう。それはある意味ではどうしようもないことだ。

現代の日本では皆が共通して持てる「リアルさ」が徐々に姿を消しはじめている。言い換えれば、「リアルさ」が乖離してきている。その溝を埋める意図は本稿にはないので、「そういうのも、可能性としてはあるかもしれないな」ぐらいで放置しておいてくれるとありがたい。

裾野の広がり

第一回でも書いたように、手帳の役割は徐々に変化してきている。単なる備忘録から、セルフマネジメントツールとしての役割を担うようになってきている。

現代では、人が活動する分野が会社以外にも増えてきた。それに「会社で働いている人」以外の人__たとえば主婦__も活動する機会が増えてきている。

人が管理する情報が多様化すると共に、管理したいと希望する人の裾野も増えてきているわけだ。

そして、重要なポイントはクラウド+スマートフォンは非常に敷居が低い、ということだ。

昔の手帳連携技術は、かなりマニアックな世界だった。手帳通の人がその技を競い合うように__実際は自分の不便を解消するために__高度な技術を開発していったが、誰しもが簡単に使えるものではなかった。便利さを享受するためには、一定の「知識」が必要だったわけだ。

今、パソコンとスマートフォンでGoogleカレンダーを同期させるのはおそろしく簡単だ。使っている人がどういう仕組みになっているのか全く分かっていないということも十分にあり得る。もちろん、このスタイルも他の方法論と同じように、マニアックさを追求していくことはいくらでもできるし、それをしている人もいる(あのBlogとかあのBlogとか)。

ただ、普通に使うだけでも相当に便利な環境が提供されていることは確かだ。しかも無料である。

少し前に、私の連れ合いがiPhone4Sにケイタイを機種変更したので、ついでにGoogleアカウントを取得しておいた。今では、私とGoogleカレンダーを共有している。
※設定は私がした。

彼女が自分のiPhoneで仕事の予定を入れれば、私のGoogleカレンダーにその情報が表示されるし、逆もまたしかりである。紙のカレンダーに二人で予定を書き付けていたことが遙か昔の出来事に感じられる。

もちろん、本当の意味で「誰でもが使える」とは言わない。ただ、これまでの「手帳」__つまり、自分の情報を管理する方法__に比べれば、遙かに容易に、すこぶる高度なことが実現されている。

セルフマネジメントのための強力なツールが、多くの人に向けて開かれているわけだ。足りないのはちょっとしたノウハウである。

さいごに

と、いうような話を序章にするような内容が「手帳論」である。

もちろん、本題はその「ちょっとしたノウハウ」になる。言い換えれば「手帳論」を背景にした「セルフマネジメント論」になるかもしれない。今回は【試し書き】だったので、これ以上は続けないが、もしかしたらメルマガで続きを書くこともありえる、かもしれない。

ちなみに、北真也さんのセルフマネジメント論は、次の本で濃厚に語られている。興味がある方はぜひ。

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