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【書評】『プラグマティズムの作法』(藤井聡)

Posted on 2012 年 4 月 18 日 by Rashita

麻雀をしていると、ときどき妙な「こだわり」に縛られる時がある。

「このイッツーはぜひとも仕上げたい」
「1000点なんて、カッコ悪くて和了れない」
「国士イーシャンテンでオリられるか!」

ものすごく単純に考えれば、麻雀は最終的に持ち点が多い人が勝つゲームである。だから、「高得点の手を仕上げる」という手段は別に間違っていない。

しかし、高い手を狙うあまり完成が遅くなったり、攻め込みすぎて相手に振り込んでしまっては本末転倒だ。「自分の持ち点を増やす」という目的とは逆の結果をもたらしてしまう。

同じような構図はちまたに溢れかえっている。

本書は、その構図を指摘し、そこからの脱却を提言する一冊だ。

プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破る思考の習慣 (生きる技術! 叢書)
プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破る思考の習慣 (生きる技術! 叢書) 藤井 聡

技術評論社 2012-04-18
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※出版社さまより献本いただきました。ありがとうございます。

概要&章立て

タイトルにある「プラグマティズム」とは何だろうか。

ウィキペディア大先生にお伺いを立てると、

プラグマティズム (英:pragmatism) とは、pragmatisch というドイツ語に由来する実用主義、道具主義、実際主義、行為主義とも訳されることのある考え方。

とある。「実用主義」と言われても、あまりピンとはこない。

本書の「はじめに」には、非常にシンプルな説明が載せられている。

「人間、何をやるにしても、それが一体何の目的や意味があるのかを、見失わないようにしましょう」

詳しい解説は第一部でなされているが、本書が提示する「プラグマティズム」の考え方は上の説明でだいたい掴めるだろう。

上のような「当たり前」風なことが提言されるのは、逆からみれば、それがよく忘れ去られる、ということを意味している。

頭に書いた麻雀の話のように、「勝利を掴むための手段」がいつの間にか「目的」へとすり替わってしまうような現象は人間が関わる分野では珍しくない。海老原嗣生氏の『仕事したつもり』ではビジネスの世界での「そういう話」がいくつも紹介されている。

本書ではこのような現象を「目的の転移」と呼び、それが日本の閉塞感を生み出す原因になっているのではないかと提示する。その上で、「プラグマティズムの作法」によって、そこからの脱却をはかろう、と一石を投じている。

章立ては以下の通り。

第一部 プラグマティズムとは何か?
 第一章 プラグマティズムで「閉塞感」を打ち破る
 第二章 プラグマティズムを正しく使うために
 第三章 どういう「言語ゲーム」に従事しているのかに思いを馳せる
第二部 日本には、プラグマティズムが足りない
 第四章 深刻な「経済学」のプラグマティズム不足
 第五章 「現代ビジネス」には、プラグマティズムが足りない
 第六章 日本の「まちづくり」「国づくり」には、プラグマティズムが足りない
第三部 プラグマティズムによる閉塞感の打破

3つのポイント

本書で押さえておきたいのは、次の3つの点だ。

「目的の転移」の構造

まず一つ目が、「目的の転移」がどのように起こるのか。

これは第一章で詳しく解説されている。簡単に言えば、全体の構造を見失うor全体の構造が固定化したものだと考えてしまう、という二つの理由にまとめられるだろう。視野が狭くなる、と言い換えてもよいかもしれない。

こうしたことは誰にでも起こりうる。

本書では、

だから、学問に誠実に向き合うということは、常にどこかで不安を覚えながらも朧気にでも何とか全体の知識構造をイメージしつつ、それによって自らの仕事の意義を自分なりに理解しながら、その仕事に勤しむ、という作業でなければならない筈なのです。

と指摘されているが、これはなかなか「しんどい」作業だ。特に「不安」は心的エネルギーをかなり消耗させる。
※だから「安心」を売るのがビジネスになり得る。

エネルギーを節約したがるのが脳の傾向であることを考えれば、上記のような作業から距離を置いてしまうのはごく自然なことと言えるかもしれない。

だからといって、「目的の転移」に陥ったままでよい、というわけではないだろう。

二つの思考テスト

押さえておきたい二つ目のポイントは、この「目的の転移」に陥っていないかをチェックするための二つの思考テストだ。一つが「So Whatテスト」で、もう一つが「Grand Motherテスト」。

「So Whatテスト」といっても、マイルスの演奏をコピーできるかどうか、というテストではない。「だから何?」と問いかけるテストだ。

この言葉は他人様に使うとかなり「上から目線」になってしまうが、自分自身に使う場合にはまったく問題ない。それにたいへん有効なトリガーワードになる。

「だから何?」と自問して、そこに答えを出す。その過程の中で、大きな目的(あるいは全体の構造)が朧気ながらでも浮かび上がってくるだろう。

この問いはいつもポケットにしまっておき__もちろん比喩的に__、ときどき手鏡をのぞき込むように自問するとよいかもしれない。

「Grand Motherテスト」の紹介は割愛するので、本書を直接あたって欲しい。

「プラグマティズムの作法」

最後の三点目である「プラグマティズムの作法」。タイトルにもなっているし、本書の骨子とも言える要素だ。作法といっても大げさなものではない。本書ではたった二つだけ、その作法が示されている。

作法一 「何事に取り組むにしても、その取り組みには一体どういう目的があるのかをいつも見失わないようにする」
作法二 「その目的が、お天道様に対して恥ずかしくないものなのかどうかを、常に問い続けるようにする」

作法一は先ほども示した思考テストが実践の役に立つ。問題は作法二だ。

こうして引用してみるとより強く実感するのだが、今の20代に「お天道様に対して恥ずかしくないもの」という表現が通用するのかどうか私にはわからない。ある時代では通じたのだろうが、現代で汎用性のある表現とは言えないかもしれない。しかし、こういう風に表現するしかないジレンマみたいなものもある。

もし、「お天道様に対して恥ずかしくないもの」という感覚を持っていないとすれば、作法二はあまり役には立たない。

ここをどう埋めていくか、というのはまた別の問題としてあるように感じる。

さいごに

ドラッカーは、マネージャーに必要な資質を「真摯さ」であると言った。本書ではそれが「真剣」という言葉で語られている。プラグマティストたらんためには「真剣さ」が必要、と著者は強く主張している。

「真面目」じゃなくてもよいが、「真剣」であることは必要だ、と私も感じる。

そういうものを持っていなければ、上のような面倒な問いかけを自分自身に向け続けることなど不可能だ。

しかし、他の人に向かって「真剣でありなさい」と言うことはどこか虚しい。これは『当事者の時代』の中で佐々木俊尚氏が書いていたことに通じる。「当事者たれ!」と誰かに言うのではなく、まず自分自身が当事者であることを選択する。その結果として広がっていくものに期待する。そういうことしかできないのだろう。

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