最近、読んだ三冊の本があります。
人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか |
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西條 剛央
ダイヤモンド社 2012-02-17 |
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ |
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鈴木 博毅
ダイヤモンド社 2012-04-06 |
プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破る思考の習慣 (生きる技術! 叢書) |
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藤井 聡
技術評論社 2012-04-18 |
扱っているテーマは異なっているものの、この三冊にはある種の共通点が感じられました。
それは、「前例主義」に陥らないことの大切さです。
それぞれの書評については、次のリンクをどうぞ。
【書評】『人を助けるすんごい仕組み』(西條剛央)
【書評】『「超」入門 失敗の本質』(鈴木博毅)
【書評】『プラグマティズムの作法』(藤井聡)
構造構成主義
『人を助けるすんごい仕組み』には、次のような文章が出てきます。
要するに、考えればいいポイントは2つしかない。それは『状況』と『目的』なんです。いまはどういう状況で、何を目的にしているか。今回の場合は、目的は『被災者支援』ですけれども、こおの2つを見定めることで、『方法』の有効性が決まってくるんです。
「方法の有効性は、状況と目的に応じて決まる」
ごく当たり前の事柄に感じられますが、実際これが無視されている事例は多くあります。
状況や目的を無視して、方法だけ「持ってくる」というやり方はうまくいくはずがありません。
ダブル・ループ学習
『「超」入門 失敗の本質』では、
「同じ指標ばかり追いかけると敗北する」
という言葉が出てきます。
この対策として、ダブル・ループ学習が紹介されています。これは「一定期間ごとで方法を見直そう」という風に簡単に表現できるかもしれません。方法を見直すというのは、状況を再確認し、目的を再設定しよう、ということです。
プラグマティズムの作法
『プラグマティズムの作法』で紹介されている「プラグマティズムの作法」は、次の二つです。
作法一 「何事に取り組むにしても、その取り組みには一体どういう目的があるのかをいつも見失わないようにする」
作法二 「その目的が、お天道様に対して恥ずかしくないものなのかどうかを、常に問い続けるようにする」
これも上の二つとほとんど同じことを意味していますね。
これまでの手段に固執せず、目的に応じて取り組み(あるいは取り組み方)を変化させる、ということでしょう。
前例主義からの脱却
これらの要素は、
「ある手段の有効性は、状況と目的に応じて決まるのだから、まずそれを確認しないと、有効性ある手段は手に入れられない」
とざっくりまとめられるでしょう。
手段にだけ注目することは適切な結果を導き出しません。状況を見極め、目的を見定める。そこから手段を選んだり、見つけたり、新しく作り出していく。そういうアプローチが推奨(あるいは提唱)されています。
これは、「前例主義」の否定と言ってよいかもしれません。つまり日本の病理からの脱却です。
4つの環境
状況と目的について、少し考えてみましょう。それぞれの「変化」には次の4つの組み合わせが考えられます。
- 状況も目的も変化している。
- 状況が変化して、目的はそのまま。
- 状況はそのままで、目的が変化している。
- 状況も目的もそのまま
このうちの4つめは「安定期間」と呼べるでしょう。鎖国していた日本、みたいな状況です。
この安定期間では、前例主義・慣例主義が非常に有効です。状況も目的も変化していないのであれば、一つ前に成功した手法は、次でもきっと成功します。この環境下の中では前例主義が最適解なのです。
が、環境には違うバリエーションもあります。そして、おそらくは「安定期間」以外の時間の方が長いのではないか、という気がします。安定期間は、流れの中の一部分でしかなく、やがて終わりがやってきます。
さいごに
おそらく、
「状況と目的を確認し、それに合わせた手法を選択していく」
というのが「変化多き時代」において有効なアプローチなのでしょう。これは国政や戦争についてだけではなく、個人の生き方や仕事術にまで広がるアプローチです。
「状況と目的の確認」は一度実施すればOKというものではありません。それは、一定期間で繰り返す必要があります。言い換えれば、進行のプロセスに組み込まれている必要があります。
確認してみても、何も変わっていないことが確認されるだけかもしれません。それでも、それを確認できたことには意味があります。
また、「それに合わせた手法を選択する」というのも簡単なことではありません。でも、まったく不可能なことでもないでしょう。
手法についての知識が多ければ、選択肢は増えます。そういう意味で多数の手法を知っておくのは悪いことではありません。ただ、手法の知識を増やすだけでは問題解決には繋がらない、という点は踏まえておく必要があるでしょう。
One thought on “変化多き時代におけるアプローチ”