7-本の紹介

【書評】『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(木暮太一)

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書) 木暮 太一

講談社 2012-04-26
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タイトルにある「こんな働き方」とは、どんな働き方であろうか。

働いても働いても一考に給料は上がらないし、どんどん仕事の量が増えて、忙しくなってきているような感じもします。滅私奉公的なサービス残業は相変わらずあたりまえだし、土日もがんばって働かないとノルマを達成できません。

著者はこれを「まるでラットレース」と表現している。

今現在日本の「働き手」で上のような感覚を覚えている人の割合がどの程度なのかはわからないが、たぶんゼロではないだろう。本書はそういう人のために書かれた本だ。

章立て

章立ては以下の通り。

第1章 僕たちの「給料」は、なぜその金額なのか?
第2章 僕たちは、「利益」のために限界まで働かされる
第3章 僕たちは、どうすれば「高い給料」をもらえるようになるのか?
第4章 年収1000万円になっても、僕たちには「激務」だけが残る
第5章 僕たちが目指すべき「自己内利益」の増やし方
第6章 僕たちは、どういう「働き方」を選択すべきか

まず資本主義経済における「価格」の決まり方を解説し、それを労働市場における賃金に転用している。言い換えれば、会社が「買い手」、労働者が「売り手」の構図に当てはめている。

商品の「値段」は、その商品の「価値」を基準に決まる

上の文章を、商品=その人が提供するもの、値段=給料、に置き換えれば分かりやすいだろうか。

問題はこの「価値」という言葉だ。これを解説するために、本書ではマルクスの『資本論』が引き合いに出されている。というか、本書の前半部分は『資本論』の簡単な解説と言ってよいかもしれない。

本書では二つの価値__「使用価値」と「価値」__の違いが丁寧に説明されている。ものすごく簡略化すると、前者は「役に立つ度合い」、後者は「平均的な手間」になるだろうか。そして後者にあたる「価値」が「価格」の土台を作る、と紹介されている。

誤解を恐れずにざっくり書くと「手間がかかっている方が価値が高い」というわけだ。この考え方を推し進めていくと、機械が人間の仕事を奪ってしまうことはあり得ない、にたどり着くわけだが、それはまた別の話である。

次なる一歩

とりあえず、こうした資本主義経済についてざっくり理解を進め、企業の利益の生み出し方を押さえた上で、「ふつーに働いていたんではこのままずっと変化はないですよ」と著者は提示する。がんばる__長時間労働する、きついノルマをなんとかクリアする__だけでは同じことが繰り返されるだけでその先に「楽」は待っていませんよ、と語りかける。

ではどうすればよいのか。それが第四章以降で語られていく。注目したいのは第五章〜第六章を通して紹介されている8つの「働き方」のポイントだ。この中の3つめのポイントである

労働力を「消費」するのではなく「投資」する

は特に共感できる。

これが何を意味するのかは本書に譲るとして、仕事の時間を漫然と過ごすのは、とてももったいない、という事だけは言えると思う。

8時間言われた作業をこなしました。次の日も8時間言われた作業をこなしました。その次の日も・・・。

この繰り返しの先に待っているものはなんだろうか。いや、そんな先の話をしなくてもいい。明らかに上のような繰り返しはつまらないと思う。それよりも

  • 8時間の作業を7時間30分で終えるにはどうするか。
  • 8時間作業するけど、8.5時間ぐらいの成果を出すにはどうするか。
  • この作業を止めて、他の作業で似たような成果をあげられないか。
  • 他の人はどうやって作業しているのだろう。
  • 作業を人にうまく割り振る仕組みはどう作ればいいのか。

などと考えた方がはるかに楽しい。それにきっと「何か」を得られる。

その「何か」はさまざまな側面から多様な言葉として切り取れる。なので今回はあえて「何か」という言葉で済ませておく。ただ、漫然と作業を繰り返していただけでは得られない「何か」は自分が提供できるものを質的に変化させていくことになるはずだ。

もし10年という時を、上のようなことを意識している人とそうでない人が過ごしたのならば、その差はとてつもなく大きなものになっていることだろう。

さいごに

ちなみに、「ラットレース」という言葉でピンと来る人も多いだろうが、本書はマルクスの『資本論』だけではなく、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』についても言及されている。

この本は「お金に関する知識って大切だよな」と「資産に投資して、不労所得をゲットしようぜ」という話なのだが(とてもざっくり)、本書では投資の対象が不動産物件ではなく、自分の労働力に置き換えられている。

こういう風に書くと、ガンガンセミナー行って、一年間で年収を10倍にしよう!みたいに受け取られるかもしれないが、本書はそういう話ではない。年収が10倍になれば確かにうれしいが、それがそのまま幸せにつながるとは限らない、という非常に当たり前な(そして忘れられがちな)所が大きな柱になっていて、個人的にはそれに好感を覚えた。

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2件のコメント

  1. 僕も先日読み終えました。読み込み方が参考になります。
    「何か」の部分は自分たちで考え見つけ出すんですね。
    「何か」を意識して僕は働きたいと思います。

  2. >岡本大輔さん
    そうですね。やはり自分で考えて見つけることが大事だと思います。それも頭だけで考えるのではなく、実際にいろいろ体験を重ねてみて、というのが大切です。

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