正直、タイトルを見て「いまさら”なう”かよ」と思ってしまった。
論語なう ~140文字でわかる孔子の教え~ (マイナビ新書) |
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牧野 武文
マイナビ 2012-04-24 |
※出版社さまより献本いただきました。ありがとうございます。
もちろん、単に「なう」と付けておけば売れるだろう、という投げやりなネーミングではない。
なんと『論語』を「なう語訳」__現代風の言葉遣い__した一冊である。
概要
書き出しには衝撃的な一文が鎮座している。
『論語』は、2500年前のツイッターです。
はてさて、どういうことだろうか。
当時の本は、紙ではなく竹簡作られており、一つ一つの条(項目のようなもの)は100文字から200文字の短い文章で構成されていたようだ。また、ストーリーや体系などは存在せず、ランダムに孔子の言葉が出てくるようになっている。
なるほど、確かにツイッターに相通じる部分はある。
そういえば、『論語』はだいたい
「子曰く、」
の形で書かれている。「孔子さんは、こう言っていましたよ」というわけだ。本書では、これは非公式リツイートに相当すると解説されている。しかし、もしかしたら「マック女子高生メソッド」の可能性もある。
※マック女子高生メソッド
実体がどうなのかはわからないが、確かに『論語』とツイッターには似ている部分があると言えるかもしれない。
著者は@KongziNowというアカウントで、『論語』の言葉を現代若者風に置き換え、つぶやくという試みをしているようだ。
その中で好評だったものを集め、一冊の本にしたものが本書である。見開きで一つの条の、漢文読み下し文、なう語訳、そして解説がまとめられている。
「なう語訳」の威力
「なう語訳」とは、どのようなものか。
実際に見てもらうのが一番だろう。
「子曰く、これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず」
これが、なう語訳ではこうなる。
どんなことでも、知識をもっているだけのやつは、好きでやっているやつには勝てない。
好きでやっているやつは、楽しんでやっているやつには勝てない。
どうだろうか。格式パラメータはずいぶん下がったかもしれないが、ぐっと身近な感じになったのではないだろうか。こうした「なう語訳」が100個ほど紹介されている。
漢文の書き下し文アレルギーの人でも、『論語』の雰囲気を知ることができるだろう。
さいごに
こうした試みを軽率だとか、中身がないと切り捨ててしまう人もいるかもしれない。しかし、メッセージは伝わってナンボである。まず、興味を持って、顔をこちらに向けてもらわなければいけない。そういう意味で、「なう語訳」はなかなか面白いと思う。
紹介されている『論語』を見ていると、「大事なことだから二回言いました」メソッドが使われているなど、現代と通じる部分もあって興味深い。もちろん、2500年前から、私たち人類が抱えている問題の本質もさほど動いていないことが伺える。
おそらく電脳化が進み、人類の共有知に誰でもが即座にアクセスできるような環境が出現しないかぎり、同じようなことを繰り返し続けていくのだろう。
そういう環境が出来たとしても、何も変わらないのかもしれないが。
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