7-本の紹介

【書評】『働くということ』(日本経済新聞社=編)

ビジネス系の雑誌で特集される「ノート術」の企画が好きである。

そこで紹介されている「有名人のノート術」も面白いが、「普通のビジネスパーソンのノート術」がたくさん載せられている企画の方がもっと面白い。

ノートの使い方を見れば、その人がどういう情報を求めているのか、何を補完したいのか、何を伸ばしたいと思っているのかが見て取れる。その人の「価値観」をチラリとのぞき込むような感覚があるわけだ。これは本棚でも似たようなことが言える。

他人のノートの使い方がそのまま真似できるわけではないし、本棚とそこに並べる本もまるっきり同じというわけにはいかない。つまり、直接的に役立つことはない。

しかし、何かしらのヒントは得られるだろう。どんな価値観を持ってそれと接しているのかが分かれば、自分の価値観との差異を踏まえて、アレンジできるはずだ。

他の人のやり方は、そういう役割を持っている。

働くということ (日経ビジネス人文庫)
働くということ (日経ビジネス人文庫) 日本経済新聞社

日本経済新聞社 2006-09
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2006年に初版が出た本書は、その「働き方」バージョンと言えるだろう。

働き方と物語

「働くとは何ですか?」

この質問にきっぱりと答えるのは難しいかもしれない。社会的・経済的・哲学的な分野から知見をいろいろと引っ張ってきたくなる。でも、

「あなたにとって、働くとは何ですか?」

ならばどうだろうか。ずいぶん答えやすくなったのではないだろうか。そこに一般性を求める必要は無い。ただ、自分が感じている「働くこと」について述べればいいだけだ。

それでもまだ答えを出すのは難しい人もいるだろう。若い世代ならば特にその傾向は強まるに違いない。その問いに「生活費を稼ぐためです!」とはっきり答えられる人は、この本は特に必要ない。ただ、漠然としたまま考える糸口すら見つからない場合にはきっと参考になるはずだ。

本書では、様々な人の「働き方」や「職業人生」についての想いが語られている。社会的成功を収めた「有名人」ではなく、ごくごく「普通の人」のお話だ。

新卒で入社し、そのまま無事定年まで勤めた、というお話はない。それぞれの人が、仕事や会社との付き合いの中で、苦悩を感じ、葛藤と付き合い、希望を探し求めている。そこにはいろいろな形の「物語」が息づいている。

今、必要なことはこうした「物語」に一つでも多く触れ、「働き方」のイメージを多様に膨らませていくことではないかと思う。

新卒で入社できなくても、途中で退職しても、それで終わりというわけではない。
会社にしがみついていても、定年までの仕事が約束されているわけではない。

その事実に直面したとき、つまりこれまでの「物語」が機能しなくなったとき、人は自分なりの物語を紡ぎ始めなければいけない。そういう状況において、多くの「物語」に触れた経験はきっと役に立つ。

さいごに

本書にはケインズの言葉が紹介されている。

「生きるために働く必要がなくなった時、人は人生の目的を真剣に考えなければならなくなる」

「働くとは何か?」について考え始めると、人生の目的についても思いを馳せざるを得なくなってくる。生きるために必至に働いている人は、そもそも「働くとは何か?」について考える余裕などない。

こういう問いが出てくること自体が一つの豊かさの表れであるとも言えるだろう。

もちろん、そう言ったところでこの問いが簡単になるわけではない。ライフワークという言葉があるが、それと同様に一生付き合っていく問いかけ__ライフクエスチョン__なのかもしれない。

「あなたにとって、働くとは何ですか?」

いやはや、__まだ若い私にとっては__難しい問いかけである。

▼こんな一冊も:

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