7-本の紹介

【書評】『予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!』(ケビン・メイニー ヴィヴェック・ラナディヴェ)

本書の帯にはこうある。

膨大なデータを分析しても
先は読めない!
「ひらめき」はどこから
生まれるか?

「ひらめき」がどこから生まれるのか、実に興味深いテーマである。

予測力 「最初の2秒」で優位に立つ!
予測力 「最初の2秒」で優位に立つ! ケビン・メイニー ヴィヴェック・ラナディヴェ 有賀裕子

朝日新聞出版 2012-03-07
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例えば、この文章の書き出しに何を持ってくるのか。これもデータ分析ではなく、単に私のひらめきが決めている。こういう文章にしてみよう、と私の脳が囁くのだ。ピッピッピという音と共に__実際にそんな音は鳴っていないが__ひらめきという演算結果がはじき出され、それに従って頭に持ってくる文章が決定する。

この演算過程は、「こういう文章なら(あるいは構成なら)、読者が興味を持ってくれるだろう」という予測でもある。

これが文章を書く「能力」であり、私たちの「脳力」でもある。

予測力について

原題は「THE TWO-SECOND ADVANTAGE」。最初の二秒の優位性、といった所だろうか。副題は「How We Succeed by Anticipating the Future──Just Enough」。Anticipatingという見かけない単語は、「先読み」とか「先回り」を意味している。

辞書には、「He is quick in anticipating your wishes.」(よく気がつく人だ)なんて例文も紹介されている。確かに仕事ができる人の中には、「先回り」ができている人が多い。桜井章一さん風に「間に合っている」と言い換えてもよいだろう。相手がリーチをかける一巡前に危険牌を切り終えている、そんな感じの人はいつでも自分の間合いで戦えるだろう。

状況に効果的に対応するためには、準備が必要だ。当然、状況が起きてからでは遅い。状況が起きる前に、何かしらの行動を取っておく必要がある。そこで鍵を握るのが「予測力」だ。このまま行けば、こういう状況が起こりそうだぞ、と見越す力。それがなければ前持った準備など不可能に近い。

本書はその「予測力」に焦点を当てている。

概要

章立ては以下の通り。

第1部 天才の脳
 第1章 ウェイン・グレツキーの予測脳
 第2章 タイプ1とタイプ2、そして大脳皮質
 第3章 優れた頭脳
 第4章 ふつうの脳の優れたソフトウェア
第2部 優れたシステム
 第5章 頭脳さえあったら
 第6章 優れたテクノロジーと優れた企業
 第7章 脳のようなコンピュータとコンピュータのような脳
第3部 ”最初の二秒”の優位
 第8章 ”最初の二秒”の優位とよりより世界
 第9章 ”最初の二秒”の優位とよりよい頭脳

ご覧のとおり3部構成になっている。

第1部では、優れた予測を行う脳が、どのように生まれるのかというお話。これは『天才!』『究極の鍛錬』と似たような内容である。つまり、豊富な経験、大量の知識を浴びた脳がそれに最適化したネットワークを構成し、そこから効果的なパターンが生まれてくることが示されている。つまり、予測力は鍛えられるが、鍛えなければならない、ということでもある。

第2部では、その脳の特徴をコンピュータで再現するための様々な問題や技術が紹介されている。一つの方向性として提示されているのが、脳と似たような仕組みを持つコンピュータを作ること。現在のコンピュータの延長線上では難しいので量子コンピュータが必要かもね、という話になっている。

もう一つは、ソフトウェア上で脳内の情報処理をシミュレートすること。本書を読む限り、それもまた難しそうだ。なにせ私たちは「学習」するのだ。しかも自発的に。あるいは無自覚に。こうしたことをプログラミングで再現できるのか。そういう問題がある。

ただ、ある一定の分野に限れば、人間の「予測」に近いことは実現できるだろう、というスタンスになっている。むしろ、バカみたいな量のデータが扱えるので、人間にはできない予測が可能かもしれない。

第3部は応用編である。コンピュータが予測力を持ったとき、世界にどのような「良いこと」が起きるのかというのが第8章。第9章では、人間の予測脳を鍛えるにはどうすればいいのかが紹介されている。

実践的に役立つ点で言えば、第一部。知的好奇心を満たす内容としては第二部といった感じの本だ。

さいごに

スキルを磨くには実践的なトレーニングを積み重ねるのが有効、という話は前述した二冊の本で十分語り尽くされている。

考えたいのは、それにテクノロジーがどのように貢献するのか、についてだ。

記録は記憶を補佐するものである。だから記憶を有効に活用できれば、自分の体験をより活用できるのではないだろうか。ライフログが育てるひらめき。きっとそんなものもあるに違いない。

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