前回は、既存のEvernoteアプリを簡単に分析してみました。
今回は少し視点を変えて、「メタ情報」について書いてみることにします。
メタ情報とは?
Q.「メタ情報」ってなんでしょうか?
A.「情報の情報」です。
メタ情報(メタデータ)は、情報が持つ情報、あるいは情報に対する情報と位置づけることができます。
イメージしやすいように、一冊の本を考えてみましょう。
EVERNOTE「超」知的生産術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-02-26 |
本とは「情報」のカタマリです。読者は、本に書かれている「内容」=「情報」を求めてその本を購入します。
ここで視点を少し後ろに引いてみましょう。すると、本はただ情報のカタマリとしてだけ存在しているわけではないことが見えてきます。直接の内容には含まれない情報(データ)もたくさん付随しているのです。
例えば、「著者名」がその代表例でしょう。基本的に、誰がその本を書いたのかは、情報そのものの中身には含まれません。もちろん、誰が書いたかによって情報の信憑性が動くことはあり得ますが、書かれてある内容とは本来切り離された存在です。「発売日」も同様の扱いになります。
このような「情報が持つ情報」が、メタ情報です。
「著者名」や「発売日」以外にも、「出版社」「編集者」「発売された国」「カテゴリー」「ジャンル」「レビューの星」といったものも、メタ情報に分類できます。
また、メタ情報には静的なもの(変化がない)と動的なもの(変化する可能性がある)の二つに分けることができますが、その辺はスルーしておきましょう。
メタ情報の利用
こうしたメタデータは一体何のために作られるのでしょうか。
基本的には「情報検索」において効果を発揮します。つまり情報を探したり、フィルタリングしたりといった行為に使えるわけです。
アマゾンで私の本の一覧が引き出せるのは、それぞれの本に「著者名」というメタ情報が付随しているからです。特定のジャンルの本を探す場合でも同じ。それがないとうまく本を探すのは難しいでしょう。
この構図はもちろんEernoteでも同様です。
Evernoteでは、「ノートタイトル」に代表されるメタ情報がいくつも保存されています。
また、「タグ」を使うことで自分なりのメタ情報を追加することも可能です。これらを活用することで、必要に合わせてノートを引き出せるようになります。
新しい軸のメタ情報
新しいEvernoteの活用として考えたいのが、このメタ情報の添付です。もちろん、今までのEvernoteでは実装されていなかったメタ情報を添付する方向性です。
「Evernote Devcup Meetup in 大阪」でお話した中では、自分が何度そのノートを参照・編集・追記したのかという回数のメタ情報。これがあると、自分との親和性が高いノートを見つけ出せると共に、最近ご無沙汰なノートも見えてきます。
あるいは「感情」。ノートを作ったときの感情がメタ情報として残っているとライフログとしてより鮮明なものが残せるかもしれません。もちろん、今でも「タグ」を使って感情を残すことに近いことはできます。「楽しかった」「うれしかった」「悲しかった」「プンプン」「テヘペロ」などのタグを登録しておき、ノートの作成時にそれを添付するわけです。
が、実際私たちの感情は、そうした単語だけで全て表現できるほど単純なものではありません。「楽しさ半分、悲しさ半分」ということもあるでしょう。「うれしいけど、ちょっとプンプンしてしまった」というツンデレパターンも考えられます。こうした心理的内面をシンプルな言葉だけでロギングするのは無理があります。
現実レベルだと…
技術的な課題はあるとして、たとえば脳波を残しておくというのはどうでしょうか。Aというノートを作ったときの脳波とBというノートを作ったときの脳波が似ている。つまり似たような感覚だったのだろう、と推し量れます。気持ちが高ぶっていたのか、落ち着いていたのか、みたいなこともわかるかもしれません。
まあ、それが実装されるのはずいぶんと先の話なるでしょうから、例えば心拍数を残しておいたらどうかとか、ボタンをタッチしたときの強さを保存しておいたらどうかとか、あるいは強い感情の高ぶりがあったら、それをiPhoneを振りまくることで表現し、それをメタ情報として保存しておけばどうか、みたいな話を「Evernote Devcup Meetup in 大阪」でしていました。
「感情」というメタ情報はライフログならではですが、きっと他にも新しいメタ情報は眠っているはずです。
さいごに
Evernoteをライフログツールとして見た場合、さまざまなメタ情報が残っているとより強くその時の自分を再現できる可能性が出てきます。データ容量の問題を横に置いておけば、メタ情報は多ければ多いほど面白いと言えるでしょう。
また、「心穏やかな時に作ったノート」で検索をかけることができれば、イライラしている自分への処方箋になるかもしれません。
こういうのはあくまでメタ情報の一つの例です。他にももっといろいろな事が考えられるでしょう。
どういうメタ情報が存在しえて、それをどうすれば保存できるのか。
これを考えていくことも、Evernoteの新サービスを考える上で役立つのではないかと思います。
というわけで、新しいアプリの開発について3回にわたって書いてきました。次回は、私はこんなアプリが欲しいんだ、というお話を書いてみます。
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