7-本の紹介

【書評】『常識からはみ出す生き方 ノマドワーカーが贈る「仕事と人生のルール」』(クリス・ギレボー)

ルールは何のために存在するのか?

答えはいくつも考えられるが、「ゲームを面白くするため」という点は見逃せない。サッカーで誰もが両手を使えたり、バスケでボールを持ったままいくらでも歩き回れるならば、スポーツとしての面白さは半減してしまうだろう。

ルールがまったく存在しなければ、どのスポーツも大差はなくなる。何ができて、何ができないか。それが違うからこそ、それぞれのゲームは個性を持ち、違ったスキルや戦略が要求され、熱狂的なファンをも作り出す。

では、人生はどうだろうか。

いや、言い換えよう。

では、あなたの人生はどうだろうか。

常識からはみ出す生き方 ノマドワーカーが贈る「仕事と人生のルール」
常識からはみ出す生き方 ノマドワーカーが贈る「仕事と人生のルール」 クリス・ギレボー 中西 真雄美

講談社 2012-07-11
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本書はまっすぐにそう問いかけてくる。

概要

原題は「The Art of Non-Conformity」。訳しにくい言葉だが、講談社の特設サイトによると「一般社会のルールを破る作法」となっている。なにか「犯罪のススメ」みたいな感触の言葉だが、もちろんそんな本ではない。

「<当たり前>に立ち向かう方法」。こう訳してみることもできるだろう。

著者のクリス・ギレボーはタイトルにもあるようにノマドワーカーだ。世界中を旅しながら、人生を送っている。なかなか変わった経歴をお持ちなので、興味のある人は上の特設サイトにアクセスしてみるといいだろう。

その彼は本書の中で「成功」を次のように定義している。

「成功とは、自分自身が思いどおりの人生を生き、同時に周りの誰かを助けられる力を身につけること──そしてその義務を負うことだ」

もし、この定義に共感を持てないのならば、本書は「うさんくさい一冊」か「役に立たない本」のどちらかに分類されることだろう。

しかし、どこからしらピンとくるものがあるのならば、歩みを進めるヒントが見つかるにちがいない。そういう一冊だ。

希望を抱き続けるために必要なこと

玄田有史氏の『希望のつくり方』に、希望について次のような説明が出てくる。

「継続」を求める幸福に対し、希望は「変化」と密接な関係があります。(中略)過酷な現在の状況から良い方向に改善したい。苦しみから少しでもラクになりたい。もしくは誰かをラクにしてあげたい。そんな思いが、希望という言葉には宿っているのです。

つまり、「過酷な状況」に置かれていて、それを「変化」させたい、と願うとき「希望」という心的状況が立ち上がるわけだ。

面白いのは、著者が本書の最初の方で提示してる四つの原則だ。

原則1 新しいアイデアに心を開く
原則2 現状に満足しない
原則3 自分で責任をもつ覚悟をする
原則4 とにかく一生懸命に働く

これはこう考えられる。

・何かを変化させるには「新しいアイデア」が必要だ。でないと同じ事が繰り返される。
・現状に満足してしまえば、良い方向に変えようとも思わない。
・「変化するのを待つ」というのは、希望ではない。それは期待だ。
・状況が過酷であればあるほど、それを変えるためには大きな力が必要になってくる。

つまり、上の四原則は「希望を抱き続けるため」に必要なことなのだ。その希望がエネルギーになり、行動に転移する。

しかし、この四つは簡単そうに見えて実はハードルが高い。特に「現状に満足しない」は、今の日本だとなかなか難しいかもしれない。

でも、ヒントはある。

人生のデザイン・自分のルール

本書内ではたびたび「プランニング」という言葉が出てくる。

たとえば、「理想とする完璧な一日を書き出す」:ライフプランイングといった具合だ。こうしたものは、自分の心の内面を探るのに適している。

が、私はこの「プランニング」を「デザイン」に置き換えてみたい。つまり「ライフデザイン」だ。

デザインに必要なことはなんだろうか。

一番大切なメッセージを絞り込み、必要ない要素を削ぎ落とし、それらを訴えかける配置に調整することだ。

自分の人生をデザインするためにも、似たようなことが必要になる。

「自分が何を望んでいるかを考えてみろ」なんて一度も教えられたことがなかったとしても、どこかの時点で、僕たちはみな自分自身に責任をもたなくてはならなくなる。理解や自己認識が欠けていると。ほかの誰でもなく自分自身が困ったことになる。

自分が何を望んでいるかを明らかにする。それが明らかになれば、必要ないものをはぎ取っていく。そして、望んでいるものを最大限活かす配置を行う。

たとえば、あなたが世界中を旅したいのであれば、それに不必要なものを人生から削り取り、実行できる環境を作っていく。その一例が「ノマド」という生き方だ。

あるいは、とんでもなく読書が好きだったらどうだろう。おそらく、お金の使い道の大半は書籍代になるだろうし、暇さえあれば読書することになるだろう。そこで得た情報から新しい情報を生み出すことで生活費がまかなえるかもしれない。

後者は、私個人の例__物書き__だが、本を読むことと文章を書いて考えを伝えること、それに「あんまり家から出たくない」という私自身が大切にしたいことと、今の仕事スタイルはとてもフィットしている。

何を一番大切にしたいのかは人によって違う。だから「デザイン」される人生も違う。

会社勤めとフリーの優劣などまったくどうでもいい話だ。ノマドも引きこもりも好みの問題にすぎない。重要なのは「どんなルールを自分が選択するのか」ということだけ。

著者は本書を通して、ルールの見つけ方、ルールを活かして生きる方法のヒントを提示してくれている。

もし目の前に提示されているルールに違和感を感じるのならば、嘆いている間にもにルールを変えるための行動を取った方がよいだろう。それが変わり者__既存のルールに従えない人__の生存戦略なのだ。

さいごに

ビジネス書っぽいキーワードを持ち出せば、今後は「生き方3.0」が必要になってくるのかもしれない。

生き方1.0は、「すでにある生き方のモデルに従って生きていくこと」
生き方2.0は、「複数の生き方から自分に適したものを選択すること」
そして、生き方3.0は、「自分なりの生き方を作り出していくこと」

表現を変えれば、「生き方の守破離」と呼ぶこともできそうだ。これは私が、「ロールプレイからストーリーテリングへの変化」と呼んでいるものと一致する。

まあ、難しい話は横に置いておく。

これから「人生」という言葉を見つけたら、頭に「自分の」と付けてみるとよいだろう。それでその文章に違和感を感じたら、「別の人の人生の話なんだな」と見切りを付けることだ。わざわざ他人のルールに従ってゲームをつまらなくする必要はない。

逆にぴったりとはまる感覚があるならば、そこには自分のルールに採用する何かが含まれているはずだ。そうして少しずつ自分の人生の__個性的な__ルールを作り上げていくことが大切なのではないだろうか。

▼参考リンク:

講談社BOOK倶楽部:常識からはみ出す生き方 ノマドワーカーが贈る「仕事と人生のルール」 クリス・ギレボー/

▼こんな一冊も:

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