7-本の紹介

【書評】『小田嶋隆のコラム道』(小田嶋隆)

大変ストレートなタイトルの本である。「コラム道」の”道”の部分に少しだけ疑問符を投げつける余地があるが、まあ、言わんとするところはわかる。

小田嶋隆のコラム道
小田嶋隆のコラム道 小田嶋 隆

ミシマ社 2012-05-21
売り上げランキング : 3958

Amazonで詳しく見る by G-Tools

著者は日経ビジネスオンラインの「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」」でも有名なコラムニスト。そのページのプロフィールに記載されている「ひきこもり系コラムニスト」の響きににあこがれを感じる人も多いだろう(でもないか)。

その著者が「コラム」について書いたコラムを集めた本、というのが本書である。

道と態度とコラム

では、本書を読み通せばコラムが書けるようになるのか。あるいはコラムとは一体何なのかを理解できるようになるのか。

残念ながら、その答えはNoだ。原稿用紙4枚を書く力、というタイトルが付けられるような内容ではない。さっと取り出してレンジでチンして使えるような冷凍食材ではないということだ。

著者は「はじめに」で次のように書いている。

コラムは、道であって、到達点ではない。
だから、コラムを制作する者は、方法ではなく、態度を身につけなければならない。

「方法」ではなく、「態度」。とても大切なことであるように思える。特に「規格品」ではないものを生み出そうとしている人間にとっては、必須と呼べるかもしれない。

月と6ペンスを書いたサマセット・モームは次のように言った。

「小説を書くためのルールは3つある。残念ながら、誰もそれを知らない」

ようはそういうことだ。

本書は「文章作法」とか「作文技術」といった内容ではない。が、面白いことは間違いないし、ふと足を止めて考えさせられることも多い。軽い文体運びの中に、ピリリとした香辛料が混ざっている。そのバランスが絶妙で、ついついページをめくってしまう。

こういう書き方は明らかに上から目線であることを承知しながらそれでも書くと、さすがコラムニスト、といった感想がこぼれ出てくる。

文章のつむぎ方

基本的に、物書きは家に籠もって作業をするものである。それに加えて、脳内でどのようなプロセスが進行しているのかを外から観察することは__超能力者とかメンタリストでない限り__できない。

だから、自分以外の人がどのように文書を組み立て上げているのか、作り出しているのか、というのは容易には知り得ないことだ。でも、知り得ないからと言って関心がないわけではない。むしろ知り得ないからこそ興味が湧いてくるということもある。それはヒラヒラするスカートの中身が・・・いや、この喩えはやめておこう。

ともかく、他の人の「文章作成工程」は興味深い__私にとってということだが__テーマの一つである。

本書の第五回に位置する「モチベーションこそ才能なり」というコラムに次のような文書があった。

当初、私は「才能」について書くつもりだった。
結論としては、「才能は錯覚だぞ」という方向に落着するカタチで。
というのも、「才能」という考えほど若い人々を毒しているものはないと思ったからだ。

この文章から朧気ながらに、著者がどのように文章を作成しているのかが見えてくる。そして、その形はどうやら私と同じようなものであるらしい。

こうしてブログで文章を書く際、私は二つのものを持ってスタートラインに立つ。一つは、「テーマ」。話題やトピックと言い換えてもよい。あるいはタイトルだけが存在している場合もある。どれも似たようなもので、細かい内容や節分けなどは一切虚空である。

それに加えてもう一つ、「結論」的なものも思い浮かべている。だいたいが漠然としたものだ。むしろ「結論」というとエッジが立ちすぎているかもしれない。この話はこの辺に向けて進むんだろうな、という予感と言い換えてもよい。著者のように「方向」と呼ぶこともできるだろう。

これらは、「文章のベクトル」と表現できるかもしれない。

そのベクトルを頼りに、書き出しから1文1文を重ねていく。一つ書いた文から、次の文が導き出され、その文が次の文を導き出す。

するとどうだろう。当初思いもしなかったような場所に文章が着陸するときがある。「あれ?」というフキダシがそばに浮かんできそうな感覚だ。その感覚がとても楽しい。たぶん、文章を書いている内に平面が回転してしまったのだろう。あるいはベクトルそのものが変わってしまった可能性もある。ともかく、自分としては新大陸を発見したような気持ちだ。

時に着陸した場所に合わせて、ルートを(つまり過程の文章を)改変することもある。世界線を飛び越えているような感覚だ。あるいは、その波乱の入り交じった工程をそのままご披露することもある。だいたいにして、人が考えるというのはそういう形をしているものなのだから、「産地直送」にならって素の形を提示するのも面白い。

こういう書き方をしていて、何が良いかというと、文章を書くことに「飽きない」点だ。確かに疲れる仕事ではあるのだが、慣れたり、作業しているような感じを受けない。もちろん、飽きない方法はほかにいくらでもあるのだろうが、「商い」として続けていくためには「飽きない」ことは大切だと思う。えっと、これでオチがついたのかな。

さいごに

もう一つ「裏を見る眼」についてもご紹介したかったが、あまりに脱線がヒドイので別の回に改めることにする。

いまどき「コラムニストに、俺はなる」と胸熱く、思い焦がれている人がどれほどいるのかはしらないが、そういう人が読んで「役に立つ」本ではないと思う。だいたいにしてコラムそのものが「役に立つ」ものではないのだから、それは仕方がない。

かといってまったく役に立たないかというとそういうわけでもない。何を言っているのかわからないと思うが、とりあえずミシマ社さんのサイトで第一回第五回までを読めるので、それを読んでみて判断してみると良いかもしれない。

▼こんな一冊も:

月と六ペンス (新潮文庫)
月と六ペンス (新潮文庫) サマセット・モーム William Somerset Maugham

新潮社 1959-09
売り上げランキング : 24315

Amazonで詳しく見る by G-Tools

STEINS;GATE─シュタインズゲート─ 円環連鎖のウロボロス(1) (富士見ドラゴン・ブック)
STEINS;GATE─シュタインズゲート─  円環連鎖のウロボロス(1) (富士見ドラゴン・ブック) 海羽 超史郎 huke

富士見書房 2010-08-20
売り上げランキング : 9467

Amazonで詳しく見る by G-Tools

原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫)
原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫) 齋藤 孝

大和書房 2007-02-09
売り上げランキング : 143548

Amazonで詳しく見る by G-Tools

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ 平川 克美

ミシマ社 2012-01-20
売り上げランキング : 4283

Amazonで詳しく見る by G-Tools

地雷を踏む勇気 ~人生のとるにたらない警句 (生きる技術!叢書)
地雷を踏む勇気 ~人生のとるにたらない警句 (生きる技術!叢書) 小田嶋 隆

技術評論社 2011-11-01
売り上げランキング : 12232

Amazonで詳しく見る by G-Tools

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です