電車の中の「数学ガールズ」

先日電車に乗っていたとき、「数学ガールズ」を見かけた。

たぶん、中学生ぐらいだろう。横並びに座り、膝の上にカバンを置いて、その上にノートを開いていた。おそらく試験が近いに違いない。

本のページをめくりながら、聞くつもりもなく会話を聞いていると、__いや割と意識的に聞いていたかもしれない__、平均についての問題を解いているようだ。

メガネの子はあまり数学が得意ではない様子。隣のショートカットの女の子が「教師役」のようだ。『数学ガール』とは逆の構図である。

もちろん、私は「平均」の問題の解き方を知りたかったわけではないし、箸が転んでも笑いが発生する女子の会話に興味があったわけでもない。

「平均」の問題の解き方のとっかかりがわからない子に、その教師役の子がどのように教えるのかに興味があったのだ。こういうのは職業的興味と言うのかもしれない。人がどのように「説明」しているのかが気になるのだ。

話の流れから、問題はたぶんこんな感じであろうと思う。

5回のテストの平均点が分かっている(例えば80点としておこう。なかなか優秀だ)。それに加えて、1〜4回分のテストの実際の点数も分かっている(60、90、75、80)。さて、第五回の点数は何点だったでしょう。こういう感じの問題だ。

「平均」の概念が理解できていたり、あるいは似た問題を一度以上経験している人ならば、難しい問題ではない。ただ、両方が不足していると、いかにして取り組むかは見つけにくいかもしれない。まさにそのメガネっ子の「生徒」さんはそういう状況に陥っていたようだ。

さて、あなたならば、どう「教える」だろうか。

答えの数字を教える?
いきなり式を立てて、「じゃあ、これ暗記して」と言う?

まあ、その方が教える方は簡単である。が、あまり役には立たないだろう。

その小さな「教師」さんは、「まず、何をxと置くか」と別の問いを投げかけていた。これは問いを細分化したとも言えるかもしれない。問題を簡単に解ける人にとっては、ばからしい問いかもしれないが、大切な一歩である。

この場合、xに置くのは、第五回目のテストの点数だ。

すると、

テストの平均点:80点
5回分のテスト:(60、90、75、80、x)

の材料が揃う。

後は、平均点がどのように算出されたかを考えて、そこからxの値を見定める。ここまでくれば後は簡単・・・という風に思いがちだが、「生徒」さんはまだ足踏みしている状況であった。

そこで「教師」さんは、数字が二つの、それも一桁の数字の「平均」の出し方を例に挙げていた。「この場合だったら、こうなるよね。じゃあ、こっちだったら?」。こんな感じである。なかなかうまい。

結局、平均の数字に回数をかけ算して、総合値(この場合80×5で400)を計算し、そこから各テストの点数を引くことで、xを導き出すというプロセスを見事にその「生徒」さんはクリアしていた。

5分前までは、まったく手がかりの無かった道を歩むことができたのだ。心の中をのぞき込むことはできないが、「達成感」や「充実感」と呼べる何かが彼女の中に発生していたことでろう。

私は心の中でパチパチと拍手を送っていた。さすがに声をかけるわけにはいかない。

教えるのが上手い人の説明は、端で聞いていても関心させられる。年齢などはいっさい関係ない。自分もかくありたいなと思いながら、目当ての駅に到着したので車内の「授業」を背にしながら電車を降りた。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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