4-僕らの生存戦略 7-本の紹介

【書評】『トライブ 新しい”組織”の未来形』(セス・ゴーディン)

「ピラミッドを倒した船」の話をご存じだろうか。

以前、糸井重里さんがほぼ日の”組織論”について次のように書いておられた。
ほぼ日刊イトイ新聞 – “Unusual(変わってる)…”

昔は、てっぺんにボスがいて、
その下にたくさんの人が働いてて、
こういうヒエラルキーがあったでしょ。
ぼくは、これを倒してしまったら、
こういう船のかたちになると思った。

図にするとこんな感じだろうか。

働く人たちはみんな、フラットなところにいる。
で、かつてトップにいた人は、
上にいるんじゃなくて、いちばん前にいる。
それは、いくらフラットな組織だといっても、
みんながそれぞれに助け合うように
かみ合っていかないと仕事にならないから。
だから、全体はフラットだけど、
いちばん前で行き先を見てる人が必要なんです。

だから、ほぼ日の社員のことを「乗組員(クルー)」と呼ぶようにしている、と。

一番前で行き先を見ている人を「リーダー」、乗組員を「フォロアー」とすれば、この船を「トライブ」と呼ぶこともできそうだ。

トライブ  新しい“組織”の未来形
トライブ  新しい“組織”の未来形 セス・ゴーディン 勝間 和代

講談社 2012-07-25
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概要

本書の著者は『パーミッション・マーケティング』で有名なセス・ゴーディン氏。

カバーそでのプロフィールによれば、”アメリカでもっとも優秀なマーケター”として知られているそうだ。その彼が、新しい”組織”の特徴について、またその作り方や必要な態度について紹介しているのが本書である。

ちなみに本書の発売は2012年7月25日だが、著者の新作というわけではない。

原著をAmazon.comで確認すると2008年・Octoberの発売になっている。すると内容的には、ほぼ4年前の事柄を扱っているわけだ。

なるほど、とそれを踏まえて本書を俯瞰してみると、確かにこういう風に動いてきているな、という実感が湧いてくる。つまり、「トライブ」的なものがちらほらと生まれつつあるな、という実感だ。

では、そもそも「トライブ」とはなんだろうか。

トライブについて

著者によれば、

互いにつながり、リーダーとつながり、アイデアとつながった人々の集団

が「トライブ」の定義である。

これまでは地理的な仕切りの中に存在する「部族」がトライブの代表例であったが、インターネットの普及がその仕切りを取り払ったことで、様々なトライブが生まれる可能性が出てきた。

著者はそれを一歩進めて、「あなたもトライブのリーダーになろうぜ」と勧めている。

その提案の是非について考える前に、トライブについてもう少し考えてみよう。

トライブに至る道

著者は普通の集団(グループ)とトライブの違いを以下のように述べている。

グループがトライブに変わるには、次の2つがあればいい。「共有する興味」と「コミュニケーションの手段」。

この2つの要素を見て、ぱっと思いつくのが「クラスタ」だ。

Twitterなどで、自分と近い興味を持っている人をフォローしている人は多くいるだろう。たとえばEvernoteが好きならば、Evernoteが好きそうな人をフォローする。フォローされた人も別のEvernote好きをフォローしている。結果として、「興味」でつながった輪が出来上がる。これがクラスタという概念だ。

そのクラスタ内では、ある程度情報が共有される。新しいEvernote系のアプリが登場すれば、一時的にそのアプリの話題でTLが埋め尽くされる、ということもあり得るだろう。また、何か気になることがあれば、クラスタ内の誰かに質問を投げかけることもできる。

つまり、SNSでのクラスタには「共有する興味」と「コミュニケーションの手段」が備わっていると言えるだろう。

では、クラスタはトライブとイコールなのか。

その答えはNoだ。クラスタにはトライブにとって肝心なもの__リーダーがいない。現状は、クラスタは多く存在するけどリーダーの数が少ない、そんな状況と言えるかもしれない。

できるかな?

これを逆から見てみよう。あるクラスタに所属しているならば、誰でもがリーダーとして名乗りを上げ、それをトライブに変えることができる、こう言えるのではないだろうか。

さて、普段使っているSNSを少し思い出してみよう。積極的にトピックスを立ち上げたり、何かの会を主催している人はいないだろうか。その人たちは「リーダー」的な存在ではないだろうか。

考えたいのはこういうことだ。その人たちはリーダーだからそうした行動を取っているのか、それともそうした行動を取っているからリーダーなのか。もし後者だとすれば、可能性的には「誰でも」リーダーになることができる。差は「やるか・やらないか」という古典的なものでしかない。

もう一つ考えてみよう。同じクラスタの人が、新しい会を立ち上げようとしたとき、あなたはどのような気持ちを感じるだろうか。「おっ、面白そうなことやっているな。応援しよう」。こう思うとすれば、自分が手を上げた場合にも同じように感じてもらえる可能性が高い。

もちろん、反対意見や批判的な声がゼロというわけではないだろうが__それはまずありえない__、「応援者がゼロではない」というのはある種の希望になり得る。

さいごに

さて、根本的な問題である「なぜ、トライブなのか」については触れないできた。

硬直的な組織構造では実現しえない変化をトライブは生み出せるから、というのが一応の答えにはなるだろう。

でも、もっとシンプルな答えでも良いのではないかと思う。つまり、「すごく楽しいから」。

私自身はリーダーではないが、SNSで見かけるリーダー的な人はすごく楽しそうだし、またそのメンバーも楽しそうにやっている。それに結果も付いてくれば言うことなしだ。

もちろん、「楽しい」ことは「楽」とはまったく違う、というのはあえて書くまでもないことだ。「楽」を追求している人は、リーダーに名乗りを上げるのは止めた方がよいだろう。

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