4-僕らの生存戦略 7-本の紹介

【書評】ウェブはグループで進化する(ポール・アダムス)

本書を至極簡単にまとめると、

「マーケターはインフルエンサー理論をあてにしてはいけない」

となる。

ウェブはグループで進化する ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」
ウェブはグループで進化する  ソーシャルウェブ時代の情報伝達の鍵を握るのは「親しい仲間」 ポール・アダムス 小林啓倫

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では、何をあてにすればよいのか。その答えはグループだ。それも小さなグループ。

そこにアプローチすることがウェブ時代の情報伝達の要(かなめ)になる、という本である。

概要

著者のポールアダムス氏は最近、グーグルからフェイスブックに移籍したらしい。訳者あとがきによればフォーチュン誌にて「シリコンバレーで最も引っ張りだこなひとり」と評された人のようだ。体が伸びてなければいいのだが。

その彼がグーグル時代に研究していた領域が「ソーシャルメディアに関する研究」であるらしく、本書のテーマもそれに重なっている。ただし、どんなソーシャルメディアが今後流行するのか、といった話ではない。

人がどのようなネットワークを作り、それと関係性を保つのか。またそこからどのような影響を受けるのかという、興味深い話が繰り広げられている。

さらに、私たちの脳が「合理的ではない」という行動経済学的な話も添付され、人がどのように行動を決めるのかについての知見も得られるようになっている。

マーケターは人の行動(買う・買わない)に影響を与えたいと思い続けている人だから(ですよね)、こういう話はアンテナにビンビン引っかかるのではないかと思う。

もし、

「SNS、あぁ、ブームになっているヤツでしょ」

と思っている方は一読された方がよいだろう。

3つの注目ポイント

面白い話はたくさんあるのだが、数を絞って本書のポイントを上げると、次の3つになる。

・ソーシャルネットワークはブームではない。「日常」がネットに浸食している現象だ。
・ソーシャルネットワークは独立した小さいグループで構成されている
・そのグループの「つなぎ目」になっているのは普通の人々

それぞれ少しみていこう。

ソーシャルネットワークはブームではない

著者はこう書いている。

人々が何千年もの間、オフラインで行ってきた社会行動が、いまオンラインに移ってきていると言える。

私たち人間は「社会的動物」である。人が集まり、集団を作り、そこで絆を結ぶ。「リアル」の世界でずっと続けられてきたことだ。

社会的動物としての欲求__たとえば、承認欲求やコミュニケーション欲求__を満たす装置をウェブ上でも作り上げている。ただ、それだけの話だ。

しかし、根源的であるが故に強力でもある。簡単には廃れないだろう

これまでのオンラインは「バーチャル」と形容されてきた。現実とは違う世界、というニュアンスだ。でも、SNSでやり取りされているのは「日常」の情報である。そういう意味で、これからのオンラインはもう一つの「リアル」となっていくと言えるかもしれない。

独立した小さいグループ

簡単に言えば、ソーシャルネットワークはピラミッド構造ではない、ということだ。トップが誰々で、その下が誰々で、そのまた下が誰々で・・・と続いていくわけではない。

むしろ、「興味」を鍵にしてフラットにつながっている。しかも、その参加者はそれほど多いものではない。つまり小さいグループだ。

このあたりの話は本書の図解が分かりやすいので参照されるとよいだろう。ここでは詳細は割愛しておく。

「つなぎ目」になる普通の人々

ソーシャルネットワーク上では、従来の「マスメディアで発信→多数の人々がそれを一斉に受け取る」という形は使いにくい。なにせそれぞれのグループが独立しているのだ。

大勢の人に情報を伝えたければ、グループとグループを接続する必要がある。

それを接続するのはツールではなく、人だ。

AというグループとBというグループをつなげるのは、両方に所属している人だ。そういう人が、情報を「シェア」することで、情報をグループからグループへと橋渡ししていく。これが無ければ、情報は一つのグループ内で止まり、別のグループに伝達されることはない。

だから、大勢の人に影響力のあるインフルエンサーを探し回るのではなく、ごく普通の人々にシェアしてもらえるようなマーケティングを考えた方がよい、と本書では提唱している。これについてはまた回を改めて考えてみたい。

今回注目したいのは、「どのようなグループに所属しているのか」ということ自体が一つの「個性」になり得るという点だ。

あなたが持つ他人とのつながりは、他の誰とも同じものではない。例えば出身地の友人を想像して、それから今住んでいる場所の友人を想像してみてほしい。彼らがほとんど重なり合っていないことがわかるはずだ。そしてこのふたつのグループをつないでいる人物は、世界であなたひとりだけのある可能性が高いのである。

この指摘は大変興味深いものであると共に、自分自身の実感としてもある。

おそらくブロガーやEvernoteクラスタでコンビニネタを(積極的に)流すようなアカウントは@rashita2ぐらいなものであろう。これが予想外に「面白いですよ」と言われることが多い。普段耳にしないような話や視点を提供している、ということなのかもしれない。

どの領域も自分にとっては「当たり前」のことであり「普通」の話である。

でも、それが重なり合うと何かしらの価値が生まれてくる。実に不思議だ。

さいごに

最初の方にも書いたが、基本的にはマーケターが読んでおくと勉強になる本だと思う。

しかし、セス・ゴーディン曰く「現代は誰もがマーケターの時代」らしいので、職業としてのマーケターでない人でも役に立つ本かもしれない。

編集後記:
本書を読み終えてから、改めてマルコム・グラッドウェルの『急に売れ始めるにはワケがある」を再読した。本書と「急に〜」は別にケンカしている内容ではない。むしろ、「急に〜」のアップデート版が本書と言えるかもしれない。両方の本を読んで考えたことを、近いうちに書いてみようと思う。


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