物書き生活と道具箱

本を書く、という仕事を選んだことについて

inspired by 本を出版することと、BLOGを書くこと #nsl6(Hacks for Creative Life!)

「なぜ、本を書いてるんですか」

という質問をなんどか受けたことがある。別の人から、別のタイミングで。

じっくり眺めてみると、上の質問は哲学的な響きを持っている。人はなぜ本を書くのか。その疑問は、人生の時間を投資して検討する価値があるようにも感じられる。

もちろん、質問者の意図はそういうところにあるのではない。なぜ、本を書くという仕事をしているのか(あるいは選んだのか)、聞きたいのはそこだろう。

「本を書くのが好きだから」

おいおい、一冊目の本を書くまでは、本を書くのが好きかどうかすらわからないじゃないか。これは最初の選択の理由にはならない。

でも、本を読むのは好きだ。これはもうマクドナルドでコーラを注文すれば、コカ・コーラ社の黒い液体が出てくるぐらい確かなことだ。

しかし、本好きのその全てが物書きを目指すわけではない。編集者という道もあれば、販売員という道もある。あるいは司書だって一つの選択だろう。これは理由としては弱い。

「組織に属すのがイヤだから」

これはある。自分の心を見つめれば、顕微鏡を持ち出すまでもなくはっきりそれが見える。ただ、いくつかの経験から「組織」と呼べるもの全てがイヤなわけではないことに気がついた。ただ、確率的に私がイヤと感じる組織が多い、というだけだ。

現代日本社会で、組織に属さない選択をするならば、何かしらの「ちから」が必要だ。この「ちから」はかなり多くのものを含むので、手間を省いて「ちから」とだけ書いておくが、力こぶや権力だけを意味するものではない。相手に何かを与えられる能力全てを指す。もちろん、力なので大小はあるし、大きい方がよい場面も多い。

私の場合、文章を書く能力は、自分が持っているその他の能力に比べて少しだけ上な気がしたし、それに加えてその能力を磨いていくことに対して一抹の不満も・不安も感じなかったというのはある。たとえこの道がどこにも通じていなかったとしても、その道を歩いたことそのものに満足を感じられるだろう、そんな気がしたのだ。

「伝える・教えるのが好き」

それほど長くない人生を振り返ってみると、人に「教える」ということを長く経験してきたことに気がつく。

例えば「麻雀」。なんといっても四人揃わなければ始まらないのが麻雀だ。もし、あなたが中学生の時に麻雀を覚えたら、まっさきに取りかかることはなんだろうか。そう、仲間を増やすことだ。さすがにその年齢で雀荘に足を踏み入れることはできない。

必然的に私は、病原菌のように__人によってはそれはまさに病原菌だったであろう__近くにいる人に麻雀を教えて回った。もちろん、それ以外のボードゲームや、カードゲームも同じだ。

あるいは「仕事」でもそうだ。店長という立場は、自分で仕事を回すことよりも、人に仕事を覚えてもらうために動くことが多い。何もかも自分でやってしまいたい病を患っている私としては、最初はイライラすることも多かったが、いつしかその仕事に馴染み、「どうすれば、覚えてもらえるか」「どうすれば、動いてもらえるか」というのを徹底的に考えるようになった。

こうした傾向は、たぶんブロガーとしても物書きとしても続いている。

「同類への手引き」

上に書いたことに関係するが、どうにも私は日本的空気の常識にあまり馴染めない感じで生きてきた。他の人が当たり前とすら認識していない「当たり前」に、本当にそうなの?、ねぇ、本当にそうなの?と疑問のプラカードを掲げてしまう。

たぶん、こういうのは社会不適合というのだろうし、ぎりぎり言葉を緩めて不器用といえるのかもしれない。

まあ、それはいい。そういう風に生まれついて、育ってきたのだし、もはや手の施しようもない。というか施そうとする気持ちすら古びた涸れ井戸のように湧いてこない。

一つ言えるのは、そういう人間が12年前に見たこの社会は、かなり辛そうだった、ということだ。絶望はなかったかもしれないが、将来に希望の道筋を見つけることもできそうになかった。

では、今はどうだろうか。2012年のこの社会に変化は起きているだろうか。

私は長門有希のように分かるか分からないかぐらいに首を縦に振る。何もかもがバラ色の社会は広がっていない。でもそれはいつだってそうだ。そんな社会は幻想の中にしか存在しない。

でも、何かを求めれば、あるいは求めて行動を起こせば、波紋を起こすことができるようにはなっていると思う。あるいはその可能性にチャレンジすることぐらいはできるようにはなっている。もし、それに名前を付けるとすれば、それはやはり希望ということになるだろう。

だから私の書く本は、あるいは私が紡ぐメッセージは、私と同じような人にいつでも向けられている。そういう人たちが、前を向いて歩いて行けるように。「そういうルートもあるのね」「こういう歩き方もあるのね」と心の引き出しにしまっておけるように。

たぶん、社会にうまく適応できている人にはそんなに役に立たないだろう。出世したい人にも、有名になりたい人にもおんなじだ。別にそれはそれで構わない。そういう人向けのコンテンツは、私以外の人が書いてくれる。わざわざ私がそこにちょっかいを出す必要は無い。

さいごに

いろいろ考えてみたが、

「なぜ、本を書いてるんですか」

に対して有用な答えが出たようには思えない。

でもまあ、答えなんて初めから必要ないのかもしれない。人生なんて結局の所、与えられた舞台、巡ってきた配役の中で、うまくダンスを踊るだけのことにすぎないのだから。という物の見方はあまりにシニカルすぎるだろうか。

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