7-本の紹介

【書評】もっと地雷を踏む勇気(小田嶋隆)

本書は「地雷を踏む勇気」の続編である。まあ、タイトルを見れば解説する必要は無いだろう。

もっと地雷を踏む勇気 ~わが炎上の日々 (生きる技術! 叢書)
もっと地雷を踏む勇気 ~わが炎上の日々 (生きる技術! 叢書) 小田嶋 隆

技術評論社 2012-09-25
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※献本ありがとうございます。

構成も前作と同じで、日経ビジネスオンラインで連載中の「ア・ピース・オブ・警句」の記事を、いくつかのカテゴリでまとめてある。

章立ては以下の通り。

1 わが心は維新にあらず Idiot Wind
2 大津波はわが魂に及び After The Glod Rush
3 わが炎上の日々 Those Were The Days
4 若者たちをよろしく Take Care Of All My Children

「わが心は維新にあらず」は、ご推察の通り「維新の会」、もっと言えば橋下大阪市長についての話題。

「大津波はわが魂に及び」は、震災関係というか原発問題に関する文章。

「わが炎上の日々」は、ネットあるいは新しいメディアやツールについて、「若者たちをよろしく」は、その名の通り、現代に置かれた若者についてである。

各章題の後ろには往年の名曲(と呼ぶと怒られるかな)のタイトルが続いている。これらの曲をBGMにして読むと気分が盛り上がる・・・かどうかは知らないが、なかなか面白い組み合わせだ。
※曲を知らない方は記事末へ。便利な時代だ。

綺麗な着地、ユーモア、手がかり

著者の文章は、進行中あちらこちらへと飛躍していき、最後の最後にストンと着地が決まる。その着地具合がなんとも言えない。オリンピックの体操選手の着地を見ているような心地よさを感じる。

もちろん、全ての着地がうまくいっているとは言えないかもしれないが、「10点」の札を大きく掲げたくなるようなものもある。

たとえば、「わが炎上の日々」に収められている<シャイロックの遺書>という文章は、読み終えた後おもわず頭から読み返してしまった。一つの読み物として十分面白い。もちろん、中で指摘されている「違法ダウンロード刑事罰化問題」を考えるきっかけとしても効果があるだろう。

これは本書全体についても言える。ユーモアが随所にちりばめられているが、ユーモアだけでは終わっていない。はははと読み進めていくと、「ん?」という文章にぶつかり、考え込んでしまう。

私は以下のような文章に赤ペンで傍線を引いた。

「春先の最も困難だった時期、人々は多罰的な情報に飛びつく心理状態にあった」
「われわれからすれば、火事場でもないのに馬鹿力を出している人間は、バカなのである」
「結局、圧倒的な露出度は、視聴者を説得してしまうということだ」
「デジタルの世界に生きる人間は、ノイズに対してタフにならなければいけない」
「考える作業を苦手としている人間にとって、ある限界を超えて複雑な契約条件は、白紙委任状と一緒なのだ」

これらは、私なりの考えを進めていく一つの手がかりになるだろう。

著者が主張していることが正しいか、正しくないかは、この際あまり問題ではない。それを判断するのは読者に委ねられている。というかそれが読者の仕事である。

むしろ提示されている事柄から、何を立ち上げるのか、何を考えるのかが大切だ。

さいごに

誰もが触れようとしない話題は、提供されている視点が大きく偏っている可能性がある。それはどう考えても良い状況ではない。ただ、触れられない話題には、やっぱりそれなりに理由がある。地雷なのだ。

誰かが地雷を踏めば、次からはその道を歩けるようになる。雪かきをすれば、車が通れるようになる。

「地雷を踏む勇気」というのは、そういうことなのだろう。

ただ、地雷にも踏み方があるのだろうし、雪かきにも方法論が必要なのだろうと思う。

風刺は批判とユーモアのカクテルだ。適切な分量ときめ細かいシェイクがないととても飲めたものにはならない。バランス感覚に欠けた風刺は、それ自体が一つのイデオロギーになってしまう。

著者のバランス感覚?
それは、文章の着地姿からきっとうかがえることだろう。

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