前回は、いきなりツールバーの紹介から入ってみましたが、よくよく考えてみれば「そもそもScrivenerってなんやねん」という話をすっ飛ばしてしまった感があります。
今回は、それについて書いてみましょう。
Scrivener
カテゴリ: 仕事効率化, 教育
販売元: Literature & Latte – Literature & Latte Ltd
リリース日: 2011/07/06
みなさんの意見
まずは、実際に使っている人たちの感触を並べてみるところから始めましょう。
「書く」ためのツール、選んでいますか? Mac の文章作成支援ツールの魅力(シゴタノ!)
「文章作成のためのワークベンチ」
Scrivenerを使って一日で小説を書き上げる仕組み(Lifehacking.jp)
Scrivenerは単なる原稿エディタではなく、まだどのように何を書けばいいのかわからない段階からアイデアを放り込み、文章を醸成することが可能な思考ツールといってもいい機能を満載しているからです。
文章を推敲するには Scrivener(感じ通信)
前述したように使い方を完全に把握してはいないが、ごく大ざっぱに言ってしまえば、一つの文章に纏めるまでに関連した考えを文章化し、そして細分化された内容を自分の中で繋がりのある文章にして、一つの主題としての文章に纏める。そういうことを支援するあプケーションだと思う。
Macの文章作成支援アプリScrivenerとUlyssesを比較してみた(prime factor)
それぞれの特徴をふまえるとScrivenerは、文章を作るプロセスの全体を支援するアプリケーションだということが言えます。Scrivenerは、アイデアと情報を収集すること、整理すること、文章を書くこと、作った文章を管理することのそれぞれのプロセスをサポートするように作られています。
DropboxでつなぐScrivenerを中心とした執筆環境/ビギナーズ・ハック第39回(シゴタノ!)
本アプリはアウトラインプロセッサーであり、例えば章節見出し・・といった他段階に掘り下げて文章の構成を作って行くことができます。
こうして並べてみると、いくつかの違いはあるものの「単純なエディタではない」ということは見えてきます。ただ、あまりにも機能が多いので、「Scrivenerってこんなヤツです」っと一つの平面軸で切り取りにくいのかもしれません。
公式の意見
では別の視点から。明らかに順番が逆ですが公式サイトをチェックしてみましょう。
公式サイトの「What is Scrivener?」には、「powerful content-generation tool for writers」という紹介文があります。スーパー書き物ツール。私の感覚でもまさしくそんなイメージです。
そのサイトの中では、Scrivenerの特徴として以下の6つ要素があげられています。
Grow your ideas in style
Your complete writing studio
Write, structure, revise
Create order from chaos
Your research—always within reach
Getting it out there
※適当に翻訳してください。
さすがに公式だけあって、特徴がきちんと押さえられています。
一つの側面
では、以上の「参考資料」を踏まえて、まとめてみましょう。
まず、Scrivenerは普通のエディタではありません。タブ型エディタでもありません。アウトライナー(アウトラインプロセッサ)ですらありません。
Scrivenerの機能に何かしら名前を与えるとすれば「構造化エディタ」というのが一番近いのかもしれませんが、同名のウィンドウズアプリがあるので、少々ややこしい感じもします。
アウトライナーにならって、ストラクチャーと呼ぶこともできるかもしれません。あるいは仰々しくストラクチャープロセッサと呼んでもよいでしょう。
ともかく「文章に構造を与える」あるいは「文章要素から構造を生み出す」ことができるツールです。アウトライナーも同じようなことができますが、Scrivenerはよりそれに特化した機能を沢山有しているのがポイントです。このあたりは、連載の後半:「Scrivener文章作成術」(※)に譲ります。
※予定は未定。
文章以前のアイデアから始まって、文章の部品、そしてより大きな構造を持った文章へ。こうした一連の流れを一つのアプリで管理することができます。これがScrivenerの一つの側面です。
逆に言うと、大きな構造を持った文章を作る場合でないと「別に必要ない」系のアプリと言えるかもしれません。使っても問題ないけど、エディタでも十分だよね、という気がします。
※ちなみにこの文章はCotEditorで書いています。
もう一つの側面
Scrivenerのもう一つの側面が「文章要素以外の管理」です。ようはテキストファイル以外も「プロジェクト」に入れることができます。感覚的にはEvernoteに近いものがあるかもしれません。
よくあるのが、マインドマップをPDFで出力し、Scrivenerに保存しておく、というような使い方です。あるいは現場写真とかインタビューの音声ファイルとか、いろいろな用途が考えられるでしょう。
つまり「文章を書くのに必要そうな資料」をまとめて1つのアプリで管理できます。プレビューやQuickTimeとエディタを行ったり来たりする必要はありません。
これまた逆に言えば、こうした「参考資料」を必要としない文章の場合は「別に必要ない」系のアプリと言えます。普通のエディタで十分です。
※ちなみにこの文章(以下略)
結局の所
つまり、3点にまとめ直すとこうなります。
- Scrivenerは大がかりな文章(あるいはコンテンツ)を生み出す場面で効果を発揮するツール
- Scrivenerは文章作成の最初から最後までをフォローできるツール
- Scrivenerは文章作成に必要な(テキスト以外の)情報もフォローできるツール
何かしらこれに近いものをあげるとすれば、「IDE」がそれかもしれません。「IDE」(統合開発環境)はプログラマの方にはお馴染みの名前でしょう。ウィキペディアさんから解説を引用すると、
統合開発環境(とうごうかいはつかんきょう)、IDE (Integrated Development Environment) は、ソフトウェアの開発環境。
従来、コンパイラ、テキストエディタ、デバッガなどがばらばらで利用していたものをひとつの対話型操作環境(多くはGUI)から利用できるようにしたもの。最近のIDEには、GUIアプリケーション開発のための迅速なプロトタイピング (RAD) が可能なものが多い。統合開発環境を使うことによって、巨大かつ複雑なソフトウェアでも、作成者に負担をかけることなく開発することが可能になる。
まさにScrivenerから受ける印象はこんな感じです。書き物のIDE。
行うのは開発(Development)ではなく、作品作り(Content-Generation)なので、ICGEと呼ぶのがよいかもしれません。統合執筆環境(※)です。
※統合書物環境とか統合創作環境とか翻訳はいろいろできそうですが。
さいごに
今回はScrivenerとは何かについて少し考えてみました。あくまで概念的な話なので実際的な要素はほとんどありません。ツールとの心理的な距離感に影響するぐらいのことです。
おそらく「IDE」というたとえは、通じる人が少ないでしょうが、他に類するものがないのでどうしようもありません。それにたとえが通じなくても、だいたいどのような役割を持ったツールなのかは、多くの感想をみれば掴めるでしょう。
というわけで、次回はもうちょっと実際的な話に戻ってみたいと思います。
▼こんなリンクも:
物書きをする人の楽園:Scrivener [Mac OS X](Lifehacking.jp)
物書きする人の極楽:Scrivener 2.0(Δρακοντια)
Scrivenerがアツい!(LAB. & PEACE)
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