物書き生活と道具箱

本を書くことは…

本を書くことは難しい。

見知らぬ読者に、伝えたいことを伝えなければいけない。相手からの質問もなければ、表情を伺うこともできない。硬い文章と軟らかい文章の適切なバランスもわからない。伝わっているのかわからないまま、手探りで一歩一歩進めていかなければならない。

本を書くことは苦しい。

とても時間がかかる作業になる。行動のフィードバックはかなり先の方までやってこない。孤独で内省的な作業をずっとずっと続けなければいけない。ジャッジはすべて自分の責任だ。その責任の重さに時に潰されそうになる。

本を書くことは楽しい。

まるで、知人に地元の街を紹介しているような感じだ。しっかり下準備をして、万全の体制を整える。すると、地元のことを案外知らなかったことに気づかされる。新しい発見があり、不思議な納得感が得られる。本を書かなければ、きっと通らなかった道を知ることができる。その感触はなにものにも代え難い。

本を書くことは嬉しい。

自分の書いた本が誰かの役に立てば、とんでもなく嬉しい。読みやすくて、面白くて、その上役に立つ本として読んでもらえれば、望外の喜びだ。「望外の喜び」。よく使われるこの言葉は正真正銘の真実である。読んでもらえるだけでも嬉しいのに、その上役に立つなんて。そんな感じ。たとえ金銭的利益がその時付いてこなくたって、ほんの僅かでも読者の役に立ち、その人の人生風景を1ミリでも変えるお手伝いができたとすれば、他には何もいらない。という気分になってくる。もちろん、生計を立てるためにお金は必要なのだけれども。

どの側面も真実だし、どれか一つだけを取り上げたら嘘になる。そういう感じ。

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