7-本の紹介

【書評】ウェブで政治を動かす!(津田大介)

タイトルを見てまず疑問に思ったのは、「この文章の主語は何か」である。

ウェブで政治を動かす! (朝日新書)
ウェブで政治を動かす! (朝日新書) 津田大介

朝日新聞出版 2012-11-13
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帯にはこうある。

この国を
あきらめてしまう前に、
僕たちが
できること

つまり、「僕」であり「君」がウェブを使って政治を動かす、ということなのだろう。

概要

本書は「新しい情報技術が日本の政治に与える変化」をさまざまな視点から見つめ、進むべき方向を著者なりに示唆した一冊だ。

扱われているジャンルは多様である。ソーシャルを介したデモから始まって、ネット選挙やネット世論、GOV2.0といったところまで話は及ぶ。

しかし、通底しているのは

「情報技術を利用して政治を日常化し、政策ベースの政治を実現する」

という点だ。そのためには何が必要で、何が有効で、何が問題なのか。ある程度の希望を添えながらも、冷静な視点で状況と展望が語られる。このあたりのバランス感覚は著者ならでは、という感じがする。

上の文章がテーマとして成り立つのは、現状はそれができていないからだろう。

つまり、政治が非日常化してしまい、政策ベースの政治にはなっていない、ということだ。

もし上の話が本当だとしたら、それは「民主主義」とは言えないのではないだろうか。ウィキペディアよりこの言葉の意味を引くとこうある。

民主主義(みんしゅしゅぎ、デモクラシー、英語: democracy)とは、国家や集団の権力者が構成員の全員であり、その意思決定は構成員の合意により行う体制・政体を指す

この言葉通りであれば、「僕」や「君」も権力者の一人だ。その権力者が国家の方向性について関心を持っていないとすればこれは大事(おおごと)であろう。

もちろん、日本国は民主主義の制度(容れ物)は存在している。しかし、その中身は充分に満たされていないのかもしれない。

無関心による被害とそこからの変化

第一章にある著者の「気づき」が印象的だ。

取材をしていく過程で気づいたのは「政治や政策に無関心でいては、自分の好きなものがいつか誰かの勝手な都合で変容させられてしまう」ということだ。

3日間ぐらい学校を休んでいたら、知らない間に「清掃委員」に任命されていた。そんなことが国レベルでも起こるかもしれない。そういう危惧だ。実際、それは危惧ではなく、ごく現実的に起こりえる話である。

私は、新しい生き方が紹介される本をよく読んでいる。しかし、大半の本には「政治に関心を持って、投票に行きましょう」ということが書かれていない。それは、あまりにも自明な事柄なので著者が書かなかったのか、それとも著者に関心がないのか果たしてどちらなのだろうか、ということが気になる。

確かに「国に頼ってはいけない」という主張はうなずけるが、だからといって政治についてまったく気にしなくていい、という話にはならないだろう。国の政治は、自分の生活だけではなく、その他の構成員や将来の「国民」にまで影響を与えるのだ。

しかし、「政治に関心を持ちましょう」と言われても、とっかかりが難しいかもしれない。まだ「汝の隣人を愛せよ」の方が具体的な感じがしてくる。

その状況に変化を与えるのが、新しい情報技術(インターネット、ソーシャルメディア)という存在になってくるわけだ。

5つの変化

総じてみると、新しい情報技術が政治に与える変化は次の5つにまとめられるかもしれない。

  1. 民意を政治プロセスに届ける(デモ、政治家への直接的な意見)
  2. 民意を拾い上げる(意見をまとめるサイト、自治体のFacebookページ、Twitterの意見をチェック)
  3. 民意を育てる(議論する場所、情報を確認できる場所、政治家・政策を評価できる場所)
  4. 政治家の声を国民に届けやすくする(ネット選挙、政治プロセスの透明化)
  5. 政府のプラットフォーム化

それぞれについては本書で具体例を交えて紹介してある。

最初の2つは現状でも(ある程度は)形が出来つつあるが、3つめ以降はまだまだ課題が多い。特に、4つめ5つめは政府レベルの動きを必要とするので、1つめと2つめの動きでそれに刺激を与えなければならないだろう。

さいごに

3つめに関しては、政治の(あるいは政策検討の)プラットフォームを作ることが必要なのだろう。

残念ながら、今のネットでは「熟議」と呼べるものが行われているとは言い難い。「議論」すら怪しいのが現状だ。行われていたとしても、それはごく一部の人たちだけの話で、とても「世論」とか「民意」と呼べるものではない。

多くの国民が参加し、政治家もそこにアクセスするようなプラットフォームができれば、「新しい民主主義」あるいは「本来的な民主主義」が生まれるのかもしれない。

少なくとも、そう期待するのは「政治を諦める」よりはよほどマシな態度ではないかと思う。

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