前回、「頭の中の気になることを全部書き出す」について紹介しました。
これまで私は断然アナログ派だったのですが、「案外デジタルでもいいじゃん」と感じたのはアウトライナーでこの作業をやってみたときです。
アナログと似ている部分もありますし、まったく違った感覚を得ることもできます。
今回はこの方法を少し紹介してみましょう。
シンプルにアウトライナーに向かい合う
何を使ってもよいのですが、個人的お気に入りアウトライナーの一つである「Tree」を使ってやってみましょう。
Tree 1.8.9(¥1,300)
カテゴリ: 仕事効率化, ビジネス
現在の価格: ¥1,300(サイズ: 2.3 MB)
販売元: Top of Tree – Kazuhiro Kawana
リリース日: 2011/07/21
新規ファイルを作成して、「日付」を一つ目の項目に入れ、二つ目に「気になること」と入力します。これで準備完了。
後はその下に、ただひたすらに、思いつくことを書き連ねていくだけです。できるだけ短いセンテンスでいきましょう。誰も見てないTwitterに投稿するような感覚でいくと良いかもしれません。この際、アウトライナーの機能である、階層化は一切使いません。ただ、縦に並べていくだけです。
本当に、この時は何も気にしません。ただ「気になること」を書くだけです。書いて、書いて、書き続けていく。手が止まったら、周りを見渡してみるとよいかもしれません。何かヒント(あるいはトリガー)が見つかることでしょう。
トップダウンスタイルならば、「仕事について書きましょう」という手法になりますが、これはあくまでボトムアップスタイルです。とにもかくにも、気になることを書き出していく。スタートはそこからです。
配置換えと親作り
とりあえず、書き出せたでしょうか。きっと項目は10や20ではきかないと思います。100あっても驚きません。ともかく、ざざっと書き出せばスッキリした感覚を得られたことでしょう。実に良かった。
でも、これは最初の一歩でしかありません。大きな穴に、王様の耳の正体を叫んだだけです。
ここからアウトライナーの機能が活躍します。
まず、近い要素にあるものを、アウトライン上でも近くに配置します。仕事系なら仕事系で、Blog系ならBlog系で、家庭系なら家庭系で、といった感じです。この「近い」というのは、あなたが心理的に近いと感じるものを意味しています。世間一般的に近いとか、辞書的に近いというのはワープロとパワプロぐらい関係ありません。
この配置転換をしていると、脳の思考系が徐々にウォーミングアップしてくるのがわかるかと思います。
ある程度配置転換が進めば、その「近さ」を言葉で表現して、<親>(※)にしましょう。たとえば「次の企画案」という項目を作り、そこに所属しそうな項目を下に配置するということです。それを全ての項目に対して行っていきます。
※アウトライナーの中で、階層構造的に上に位置する項目のこと
うまく言葉が見つからないときもあるでしょうし、どこに配置すればいいのか決めきれない要素もあるでしょう。それでまったく構いません。その時、思考を止めて「よく使われているカテゴリー」に逃げるのは止めておきましょう。ともかく試行錯誤を繰り返すことです。出てくる結果がどうあれ、そのプロセスにこそ意味があります。
構造を広げる
もしかしたら、近い要素を持つ複数の<親>があって、その<親>を作りたくなるかもしれません。もちろん、作ってしまいましょう。その他の項目が親の親を持っておらず、階層表示にズレが生じるかもしれませんが、気にする必要はありません。本の目次を作っているわけではないのです。
あるいは、<親>を作ったことで、それがトリガーとなり、新しい子の項目を思いつくかもしれません。たとえば、本棚の整理についての項目を「情報環境」という親でまとめたら、プリンターをなんとかしなきゃな、と思いつく、というようなことです。それも、どんどん追加していきましょう。
同じように<親>を作ったら、似た<親>を思いついた、ということもあり得ます。それも無節操に追加していきましょう。膨れあがっても、誰からも文句は言われませんので。
気になることを掘り下げる
「気になること」として書き出した項目は、おおよそ
「〜〜したい」
「〜〜はどうするのか?」
の二つに分類できるでしょう。「〜〜したい」は「〜〜する」という意志の表明になっている場合もありますが、基本的には同じことです。
「〜〜したい」が具体的な行動になっているのならば、それで問題ありません。もしなっていないのならば、あるいは「〜〜はどうするのか?」と書いた場合は、具体的な行動にまで思考を一歩進めてみてください。
これは一通り項目を書き出した後に行えば十分です。出てきた行動はトリガーとなった項目の<子>として追加していきましょう。
もちろん、この作業をやっている時に、明確な答えが出せない場合もあります。その時は、それで放置していても問題ありません。情報収集するなり、〜〜について考える、というのが次なる行動です。
全体像を眺める
こうして、項目の追加、そのカテゴライズ、細部の確認、さらにカテゴライズ、ということを繰り返していきます。徐々に、「気になること」の書き出しは進んでいき、それらが構造化されていきます。
とりあえず一段落したら、下位の階層の表示を全て隠してみましょう。これで、自分が気になっている事柄の全体像が見渡せるようにあります。
気になっていることがあっても、その全てを実行できるわけではありません。それはフラクタルにそう言えます。つまり、10の気になる<親>があっても、それらを一気に全て達成するのは無理でしょう。またその10のうちの1つを覗いてみて、やるべきことが10個見つかっても、その全てを一気にアクションには移せないということでもあります。
とてもとても短い視点に立てば、一人の人間が一瞬でとれる行動は一つです。高速でマルチタスクを処理しているCPUも瞬間瞬間ではシングルなタスクを実行しているのと同じことです。
全体を俯瞰・優先順位の決定・具体的な行動の明示化、それらが統一観を持って行われなければいけないのです。
さいごに
どうでしょうか。スッキリした感覚を味わうことができ、さらに次の一歩を決めることができたでしょうか。何にせよお疲れ様です。
こうして作ったリストをプリントアウトして来年の手帳に貼り付けておいてもよいでしょう。あるいは、自分の中で優先させたい項目を、お気に入りのタスクリストに移し替えてもよいかもしれません。
今回作った「構造」は、次回似たようなことをやるときに、一つのテンプレートとして使用可能です。その場合は、トップダウンスタイルで進めていくことになるでしょう。でも、このトップダウンの構造はボトムアップで作られたものだ、ということは忘れないでおいてください。なにせ、環境が変わったらまっさきにやるべきことはボトムアップからの確認作業ですので。
▼こんな一冊も:
Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術) |
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倉下 忠憲
技術評論社 2012-06-30 |
クラウド時代のハイブリッド手帳術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-09-23 |
発想法―創造性開発のために (中公新書 (136)) |
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川喜田 二郎
中央公論社 1967-06-26 |
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