【書評】スマホ時代のタスク管理「超」入門(佐々木正悟 大橋悦夫)

Rome was not built in a day.(ローマは一日にして成らず)

とても良い言葉である。とても現実的な言葉と言ってもよい。どれほど大きく見えるものでも、小さな拡張の積み重ねの上に成り立っている。ごく当たり前の話だ。巨大都市ローマ、あるいはローマ帝国が一日で出現するはずもない。

しかし、ローマから視点が外れるとそれを見失う。一気に大きな成果を求めてしまうのだ。それは無理筋というものである。

日本だと「雨垂れ石を穿つ」なんて言葉もある。何度も、何度も、同じ場所にポタポタたれる水滴は、確かに力を持っている。

こうした言葉から、一般的に次のようなお話が出てくる。「大きいものは小さなものの積み重ねで出来ている。だから小さいものは大切にしないと」。至極まっとうなアドバイスだ。それに真実でもある。しかし、なんといっても不完全だ。全然物足りない。

二つ、重要なことがある。

第一に、水滴は落ちてナンボ、ということだ。壁にひっついているだけの水滴が穴を穿つことはない。
第二に、何度も何度も同じ場所に落ちなければいけない。でないと効果は発揮されない。

つまり、水滴が適切にコントロールされていないと穴を穿つような効果は発揮されないわけだ。

大きい物事も小さな物事の積み重ねで成し遂げられる。それは確かだ。問題は大きい物事が溢れかえっているときに、どうやって一つ一つの小さな物事を確実かつ適切に積み重ねて行くのか、ということだ。

そこには、ある種の手法が必要になってくる。

それが「タスク管理」である。

概要

前振りが長くなったが、本書は「タスク管理の入門書」である。実はこのテーマは、前々から自分で書きたいと思っていたテーマである。なので、つい長くなってしまった。

スマホ時代のタスク管理「超」入門
スマホ時代のタスク管理「超」入門 佐々木 正悟 大橋 悦夫

東洋経済新報社 2013-01-25
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著者は「ライフハック心理学」の佐々木正悟氏と、「シゴタノ!」の大橋悦夫氏。同じ出版社から発売されている佐々木氏の『クラウド時代のタスク管理の技術』も「タスク管理」について書かれた本だが、二冊の主旨は随分と違う。

『クラウド時代のタスク管理の技術』は佐々木氏の実践手法がベースになっており、内容は高度だ。マニアック、とすら言えるかもしれない。

対して本書は概念と方法論の紹介が中心になっており、初心者にも取っつきやすい。『クラウド時代〜〜』と比べると、内容的に間口がかなり広がっている。実践しやすい、という意味では「役に立つ本」と言えるだろう。そういう意味での「入門書」である。

タスク管理を行うメリットは何か、という話から始まって、タスク管理に関するさまざまな要素が紹介されていく。この分野に興味がある人ならば聞き馴染みのある話も出てくるだろうが、面白く読める所も多いだろう。

気に止まったところ

私であれば、「ポールタスク」という概念がそれだった。随分前から、このタスクにぴったりなネーミングを探し求めていたのだが、これは実にしっくりくる名前だ。

※私の実際例。一番上が「ポールタスク」
screenshot

加えて「チェックリストがロボットを育てるのに役立つ」というのも、よくよく考えてみれば当然なのだが、今までチェックリストのメリットとしてはあまり捉えていなかった。この「ロボット」は、小説家カレル・チャペックの創作物ではなく、脳の無意識で制御される行動のことである。
※詳しくは本書を

あと、軽く書かれているが「リストがあるからこそリストを変えられる」という指摘は非常に重要である。

スマホの効能

私もタスク管理については『ハイブリッド手帳術』で多少触れたが、本書は「スマホ」がほぼ前提となっている。それは、スマートフォン&クラウドの環境があまりにも強力だからだ。

一昔前までは、タスク管理を行うツールは「手帳」に限られていた。その後、電子ツールがいくつか登場したが、「誰もが簡単に使える」レベルとは到底言えないものだった。そしてスマートフォンである。

今でも手帳は現役ツールだが、スマートフォン&クラウドとは機能的に大きな差異がある。いくつかあげると、

  • クラウドバックアップ
  • リピート機能
  • リマインダー機能
  • 変更の容易さ
  • パソコンとの連携

などがあるだろう。特にタスク管理においては「リピート機能」と「リマインダー機能」が大変強力だ。

どちらも、小さな水滴を何度も同じ場所に落とす補助をしてくれる。忙しい現代では、小さな水滴は見落とされやすい。それに見落としたことにも気がつかない。それではいつまでたってもローマは作れない。

さいごに

「タスク管理の方法」として紹介されている事柄には、ある種のバカらしさを感じるかもしれない。「こんなことまでやらなくていいよ」と。それは確かにそうだ。もし望む行動が実行できているのならば、タスク管理なんて一切必要ない。

しかし、現実的にできていないのならば、何かしら対策が必要だろう。

その対策を「魔法の杖」に求めてしまうと少々やっかいなことになる。なんと言っても魔法の杖はローマを一日で出現させてくれるのだ。つまり、幻想である。

最終的には小さいことを積み重ねて行くしかない。それを補助するのが「タスク管理」である。

「タスク管理」は何かしらのツールを導入することではない。それは「情報の管理」がEvernoteを導入することとイコールでなかったり、「書籍の管理」が本棚を導入することでなかったりするのと同じだ。

必要なのは、考え方と手法である。「入門書」や「教科書」はそのために存在する。そして、入門書のページをめくるためには、魔法の杖から手を離さなければいけない。

バカらしいと思うことでも、一度だまされたと思って実行してみるとよい。チェックリスト、タスクリスト、タイマー、リマインダー、なんでもいい。きっと効果を体感できることだろう。

Remeber Rome.

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編集後記:
紹介した二冊の違いは、やはり「共著」による違い、なんでしょうかね。その辺が気になりました。お二人がどういう流れで「構成」を作られたのか一物書きとして興味津々です。
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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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