【書評】指導しなくても部下が伸びる(生田洋介)

ちょっとコンビニの店長になって欲しい。いやいや実際に制服を着る必要は無い。あくまで想像だ。

あなたはスタッフから次のような質問を受ける。

「店長、これ何個発注しますか?」

さて、どう答えるか。

あなたは敏腕なので、適切な発注数はすぐにわかる。答えるのに2秒とかからない。しかし、

「じゃあ、2ケース発注しといて」

と即答するようでは、店長としては少々力不足かもしれない。

概要

本書はプレイングマネージャー(PM)のための一冊だ。

指導しなくても部下が伸びる!
指導しなくても部下が伸びる! 生田洋介

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大半のPMは、プレイヤーとして一定の評価を得た後、マネージャーの立場になる。いわゆる「昇進」だ。そして、新しい立場で戸惑うことになる。

本書は10のシチュエーション別に、その戸惑いに対する処方箋を提示している。

SCENE 1 新しいチームがスタートするとき
SCENE 2 プロジェクトが動き出すとき
SCENE 3 仕事を任せるとき
SCENE 4 日常業務のなかで
SCENE 5 面談の場で
SCENE 6 会議の場で
SCENE 7 ランチ・飲み会などの場で
SCENE 8 部下が失敗したとき
SCENE 9 部下が成功したとき
SCENE10 プロジェクトが終了したとき

どれも会社の中ではよくある風景だ。

それぞれのシチュエーションに具体的な方法が提示されているので、何かしら活用できる場面が見つけられるだろう。

変化する仕事の定義

さて、なぜPMは新しい立場で戸惑うのだろうか。

それは「仕事」が変わるからだ。もう少し言えば「仕事」の定義が変わるからだ。

プレイヤーの頃は、数字を作ることに全身全霊を捧げれば成果が出た。時に不眠不休で、時に休暇返上で、ともかく自分が動いていれば結果が出たのだ。

しかし、マネージャーの立場では同じ手法は通用しない。

マネージャーの仕事は、マネジメントすることだ。

何を?

人を、である。

チームのメンバーに動いてもらい、結果を出せるようにすること。それがマネージャーのつとめだ。

勘違いしやすいのが「動いてもらうこと」と「動かすこと」の違いである。マネジメントとコントロールはイコールではない(※)。そして、コントロールしようとすると、たいていうまくいかない。
※コントロールはマネジメントの一手段でしかない:コントロール∈マネジメント。

残念な王将

将棋の盤を思い浮かべてみよう。マネージャーは王将だ。もし、その王将が「おい、飛車。俺の言うとおりに動け」と指示したらどうなるだろうか。

残念ながら縦横無尽に盤を駆け抜ける力は制限されてしまうだろう。だって、王はそれぞれ1マスずつしか進めないのだから。挙げ句の果てに「ちょっと斜めに進めるようになれよ」なんて言い出してしまう。コントロールするというのは、つまりそういうことだ。

できる王将は違う。

全体を見据え、駒の特徴を把握し、それぞれの能力が遺憾なく発揮されるように陣をくむ。自分が前に出たい気持ちがあってもグッと押さえる。そんなことをしてしまえば、盤面がぐちゃぐちゃになってしまうことがわかっているからだ。

上司の仕事

本書では「上司の仕事」を

部下が伸びる環境作り

と定義している。その目的を達成するために「指導」はしない、というわけだ。

つまり、指導をしないからといって、何もしないわけではない。やることはきちんとある。

簡単に言えば、権限委譲(エンパワーメント)とフォローアップだ。つまり、チームのメンバーに適切な仕事を割り振り、実行してもらい、それを(比喩的な意味で)隣や後ろで支えること。そして結果を検証し、評価すること。それが本書が提示する上司の仕事である。

たぶん断言してもいいと思うが、気分的には「指導」している方が楽である。あるいは自分でやった方が早い気もする。何しろ、上のようなやり方には時間がかかるのだ。

が、それはプレイヤー気分が抜けていないと言わざるを得ない。あるいは自分が本当にやるべきことが把握できていない。

権限委譲せずに何でもかんでも自分で動き回っていると、一つ上の視点から全体を眺めるような余裕がまったく持てなくなる。立場が上がれば、責任を負うべき分野は増えてくる。その全てに自分で対応していたら、時間不足はあっという間に対応不可能なレベルになってしまう。

どこかで、頭の切り替えが必要だ。

仕事がうまくいかず、戸惑いを感じている人は、

「自分の仕事は何か?」

を改めて自問してみる必要があるだろう。

さいごに

さて、

「店長、これ何個発注しますか?」

と聞かれたら、なんと答えるだろうか。

私は、「何個発注するのがいいと思う?」と尋ね返していた。もちろん、尋ねるだけでなく、その答えを検証し、実際に採用もしていた。

私が2ケースぐらいだなと思っていても、「売れると思うんで、4ケースぐらいで」と答えるならば、「よし、じゃあ4ケースでいこう」と応じる。「あと、入荷前にPOP作っといて」と付け加えるのも忘れない。その段階で、その商品を「売る」仕事が彼(ないし彼女)に委譲されるのだ。

もちろん「50ケースぐらいで」という答えには、「ちょっと、多いかな」と現実的な妥協点を見つける。数字(というか利益)を無視して良いわけではない。その線引きをするために、現場感覚のある人間がマネージャーをやっているのだ。

ちなみに、自分の考えを押しつけるために質問するのは、人のやる気を損ねる一番効果的な方法である。

「〜〜はどうですか?」「○○です」「そうかな〜。××じゃないかな。とりあえず××で行きましょう」←これが自分の言いたいこと

言われた方は間違いなく、「じゃあ、初めから聞くなよ!」と内的ツッコミを入れていることだろう。勇気のない方は、あるいは仕事をきちんと進めたい方は、決して使わない方がよいテクニックである。

▼こんな一冊も:

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