以前、「5つの仕事術」というエントリーを書きました。その中で真っ先に名前を挙げたのが「デイリータスクリスト」。
個人的に、このツール及びそれを作成する習慣は、一日の時間の使い方に大きな影響を与えうるものだと考えています。
実際、『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』、『ポモドーロテクニック入門』、『マニャーナの法則』といった仕事術系の書籍でも、これに類する手法が提唱されています。ありきたりと言えばありきたりですが、逆に言えばそれぐらい有益な方法であるとも考えられます。
また、認知心理学・行動経済学の知見を踏まえてみても、このリストの作成には一定の効果があると言えそうです。
今回から何度かに分けて、このデイリータスクリストの概念・手法・ツールについて考えてみます。
デイリータスクリストとは何か?
まず、デイリータスクリストとは何でしょうか。
それは1日分のタスクが掲載されたリストのことです。言い換えれば、その日実行する(予定の)タスクがピックアップされたリストです。
当然、今日のデイリータスクリストと明日のデイリータスクリストは別物になります。その意味で、よく使われるToDoリストとは異なった存在と言えるでしょう。ToDoリストは、項目の追加・削除という変更要素はあるにせよ、流れる川のようにその存在自体は単一です。対して、デイリータスクリストは点在する小さな水たまりのように、1日ごとに個別のリストが存在します。
「その日実行するタスク」をリストアップするということは、「その日実行しないタスク」はリストアップしないということです。これは厳守しなければなりません。そこが曖昧になると、デイリータスクリストはToDoリストへと変化してしまいます。
一日中参照してこそ
基本的な運用は、
- 朝一に(あるいは前日の夜に)、その日やる行動を決定し、リストアップする
- 日中はそのリストを参照しながら、タスクの実行を行う
- 一日の最後にリストを確認し、次の日以降に必要な行動がないかを洗い出す
という流れになります。
朝一から仕事終わりまで付き添うのがこのツールです。朝一に作成しても、日中参照しないのならばデイリータスクリストの意味はありません。そういう意味で、一日の伴走者であるとも言えるでしょう。
リストは運命を定めない
デイリータスクリストは、行動の予定であり計画です。でもって、計画はあくまで計画でしかありません。
基本的にデイリータスクリストに沿って、一日の仕事を進めていくわけですが、当然うまくいかないこと、計画外の乱入者、突然の厄災エトセトラによって、デイリータスクリスト外の行動を取らざるを得ない状況もやってくるでしょう。
それはそれで構いません。
そのリストは「これ通りに進められたら100点だな」というある種の指標や理想を示すものであり、自分を檻の中に閉じ込めるものではありません。
リスト外の行動が必要になれば、リスト外の行動を実行すればよいだけです。
ただ、何かの行動を追加すれば、何かの行動がとれなくなります。時間は有限で、追加料金を支払えばゲットできるものではありません。
リストがそこに存在していることによって、「最低限これだけはやろう」「これは明日以降にしよう」「あの人に連絡して、一日延ばしてもらう」という判断が行えるようになります。『スマホ時代のタスク管理「超」入門』では、タスクのトリアージと呼ばれている行動です。
もしリストが無ければ、本当に重要かどうかではなく、たんに「ついさっきまでやっていた」「ついさっき上司から言われた」「目の前に書類があった」というようなタスクを優先してしまう可能性があります。それも大いにあります。
さいごに
最後に今回の内容をまとめておきましょう。
- ToDoリストとは違う
- 一日の伴走者である
- 計画はあくまで計画
次回は、どんな特徴があるのか、どのようなツールが使えるのかについて考えてみます。
▼その他関連エントリ−:
デイリータスクリストを作る意味合い
▼こんな一冊も:
クラウド時代のハイブリッド手帳術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-09-23 |
なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣 (PHP文庫) |
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ケリー・グリーソン 楡井 浩一
PHP研究所 2003-04-02 |
アジャイルな時間管理術 ポモドーロテクニック入門 |
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Staffan Noeteberg 渋川 よしき
アスキー・メディアワークス 2010-12-16 |
マニャーナの法則 明日できることを今日やるな |
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マーク・フォースター 青木 高夫
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-04-05 |
スマホ時代のタスク管理「超」入門 |
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佐々木 正悟 大橋 悦夫
東洋経済新報社 2013-01-25 |
ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか? |
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ダニエル・カーネマン 友野典男(解説)
早川書房 2012-11-22 |
ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか? |
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ダニエル・カーネマン 友野典男(解説)
早川書房 2012-11-22 |
書籍「エンジニアのための時間管理術」で著者が提唱している「サイクルシステム」も、デイリータスクリストが基本になっています。私自身、その手法を導入してから、時間の見積もりや作業の進め方がだいぶマシになりました。まだまだ十分には実践・活用できておらず、もうひと頑張りという感じですが。
>sai10sightさん
コメントありがとうございます。やはり似たようなシステムは多いんですね。私もここ10年ぐらいはずっとこのシステムのさらなる追求を模索し続けているところです。
「似たようなシステム」には同感です。やはり、その日に終えるべきタスクを明らかにして、その完了を見えるようにしないと、「いつまでも片付かない」「進んだ気がしない」ということで、達成感がありませんよね。実践してみてよく分かりました。今後も追求あるのみですね。