魔女の呪い

会場は緊張感に包まれていた。 新しい元号の発表は11時からなので、あと30分は時間がある。会場では、さまざまなメディアの記者が、即座に記事を送信できるよう準備を整えている。紙のメモやノートを持っている記者はひとりもいない

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ため息

 はあ。ため息をついた。一体何度目のため息だろうか。  ため息をつくと幸せが逃げてしまうなんて言葉があるけど、あれは嘘だ。幸せが逃げているからため息が出てくるのだ。観測者の認識違いによって、因果関係の混乱が生じている。ば

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解毒剤

「博士、ついに完成しましたね」 「うむ。これで多発性認識偏向症を克服できる」  さっそく博士と助手は、いくつかの試験を行い、効果と安全性を確認した上で、<解毒剤>として大々的に発売した。博士は研究一筋ではあったものの、研

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真・嘘発見器

「博士、ついに完成しましたね」 「うむ。まったく新しい嘘発見器だ。いや、嘘感知器と呼んだ方いいかもしれない」 さっそく助手が完成したばかりの装置を身につける。腕時計とヘヤーバンドのような二つ装置は、同じタイミングでほのか

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トンネル

長いトンネルを抜けると、そこはまた別のトンネルだった。 やれやれ、またトンネルか。さっきもトンネルだったし、その前もトンネルだった。ここしばらくトンネルしか見ていない気がする。たぶん、次もトンネルなんだろうし、その次もト

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炊飯器

「お前、これ使うか?」 段ボールに本を詰めていた僕に、先輩は小さな炊飯器を掲げてみせた。 僕は大量の本を、先輩はキッチン家電を、先輩の彼女は食器を段ボールに詰めていた。狭いアパートとは言え、3人で引っ越しの準備をするのは

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線の向こう側

線の向こう側にいる人々を眺めていた。ときに指さし、ときに憧れ、ときにあざ笑いながら。 こちら側は多勢。あちら側は少人数。何も問題ない。 ましてや壁は絶対だ。 それは真理のごとく僕の前に立ちふさがる。こちら側はこちら側であ

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